
『ito』(アークライト)
現在、「数字を口にしたらアウト!」というユニークなルールの協力ゲーム「ito」や、ゴミの分別をテーマにした「Poi」など、人びとを笑顔にするボードゲームを数多く手がける326さん。そのルーツも、小学校時代にあったと言います。
「イラストづくりから派生して、オリジナルのゲームやトレーディングカードゲームも作っていました。小学生ながらに、ルールを作ってイラストも自分で描いて、友だちと一緒に遊んでいたんです。その延長線上で、テーブルトークRPGも作りましたね。サイコロと鉛筆さえあればできる簡単なゲームを作り、放課後にはよく『僕が作ったRPGをみんなでやろう!』と友だちを誘っていました。
じつは、その当時は絵だけなら描けるのに漫画や小説のような物語性のある作品を創作するのは、少し苦手だったんです……ですがゲームを通してなら、設定や物語、世界観を作れるんですよ。僕の作ったもので、みんなが楽しむ表情を見るのが小学校時代から好きでした」
創作活動のルーツにあったのは、両親からの愛。小学校時代の経験が“今”に繋がっていることに対して、326さんは感謝を示します。
「父は高校1年生で他界してしまったんですけど、母は存命です。でも今、息子が何をしているのかよく知らないんじゃないかな……(笑)。小学校時代の経験が40代になった今、自分の生活を助けてくれるとは思っていなかったですね。コロナ禍の自粛期間は家の中で遊んでいた幼少期そのもので、当時の経験はかなり役に立ちました。父と母の与えてくれたものは今も僕の中に生きているし、今でもかわらず支えられています」

地域全体でこどもたちを守ろうと活動されている団体の方から依頼され、326さんが描いた作品
本業の一方で、難病で苦しむ子どもたちや、最愛のわが子を亡くした遺族の支援にも力をそそぐ326さん。NPO法人 日本小児がん研究グループ(JCCG)の応援団として団体もサポートし、SNSでは、天国へ旅立った“天使ちゃん”のイラストを無償で描くと公言しています。
「僕が子どもたちやそのご遺族を支援するのは、40年前、障害者家族であまり裕福ではなかった僕や家族を地域のみんなが支えてくれたから……。その感謝と、そして幼い頃から自分より小さな子どもたちや生き物がたまらなく好きだったという、そのたった2つのちっぽけな理由からです。
小学校でボーイスカウトをやっていた当時も、年下の子たちの面倒を見るのが好きだったし、守ってあげることに自然と喜びを感じて。今も、散歩中の幼稚園児の列にトラックが突っ込むとか、災害で子どもたちが犠牲になったとか、大人の不注意からの事故でこどもが犠牲になってしまった……なんてニュースを見ると、もうどうしようもできないほど、何も手につかないような、そんな気持ちになります」