「懸賞生活」の辛い経験があったからこそ失敗しても頑張れた
――今は子どもや学生さんに向けての講演活動にも力を入れているとか。
「僕は福島への支援については一生かけて関わって生きていくつもりですが、震災のことは時間が経つごとに風化が進んでいるのを感じています。
これから先は若い世代にどうやってバトンを渡せるかだと思うんですよ」
――若い世代には、なすびさんのお話から何を学んで欲しいと思いますか?
「過去の苦労はいつか役に立つものだということ。なんだかんだ言っても、自分の根っこにはやはり『懸賞生活』があるんですよね。あの辛い経験があったからこそ、エベレスト登頂で失敗しても、もっと頑張れると思ったんです」
東北人の根っこの部分の真面目さが「懸賞生活」にも作用した
――思い出すことも辛かった経験が、いつの間にか糧(かて)にできるまでになっていたのですね。
「『懸賞生活』を終えた3~5年では経験したことの意味はわかりませんでしたよ。でも、10~15年くらい経った頃にようやく少しわかってきて、25年経った今、こうして映画化されるまでになった……まさか、自分のドキュメンタリーが発信される日が来るなんて思いもしませんでしたね」

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――なすびさんって、お話してみると本当に真面目(まじめ)な方ですよね。
「この真面目さが『懸賞生活』にも作用したんだと思いますよ。あれは真面目な人間じゃなければ、とっくに逃げていたはずだから(笑)
この真面目な性格って東北人の根っこの部分なんですよね。震災の時期にも自分たちが大変な状況なのに『他にもっと大変な人たちがいるから、そっちに行ってあげて』なんて言えちゃう人が多かった。利己より利他。そういう気質の人たちなんです」