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結婚後に性別違和を妻に伝えたトランスジェンダーの苦悩。義母に「気持ち悪い」と言われ、家庭では夫・父、職場では女性装

――それでも、家庭では素の自分が出せないのはやっぱりきついですよね。もしかしたらパートナーさんだって、松林さんの姿を否定したいわけではないのかもしれません。お話を聞いていると、松林さんとパートナーさんは、お互いの本当につらいときを支え合った戦友のようにも思えます。 松林:戦友……。たしかに、そうですね。腹が立つことはたくさんありますし、喧嘩もたくさんします。だけど、彼女は家族の生活を支えてくれているひとりです。家族のサポートという意味でも、私自身をわかっているという意味でも、ほかの人にはこんな話はできませんから。そういう意味で信頼はあるのかな。

トランス男性の、見た目問題

佐倉イオリ202310――お話をうかがってきて、松林さんのパートナーは、一部ではありますが、松林さんのアイデンティティと生き方を尊重しようと努めていると、感じました。トランスジェンダーにとって、アイデンティティの肯定はそれだけで救いにつながるもの、と私は感じています。 トランスジェンダー男性は、トランスジェンダー女性のように「見た目が気持ち悪い」など直接的なバッシングを浴びることは多くありません。その代わり、どんなに男性的な服や仕草をしても、女性の枠からはみ出ることもできません。 ときには、「大丈夫、あなたは女性だよ」と、やさしく諭(さと)されることも。100%の善意で私のアイデンティティを漂白するかのような、透明化される苦しさがあります。 見た目を叩かれるか、無効化されるか。どんな形であれ、アイデンティティを否定されるのはきついものです。なぜ見た目を叩かれるのか? 移行する性別でなぜ違いがあるのか? あらためて、答えを求めていきたいです。 <文/佐倉イオリ>
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