思えば当時、抗がん剤の影響で生理が止まってしまい、ホルモンも大きく乱れていたのかなと思います。もともと心配性でしたが、必要以上に不安が大きくなり、飲み込まれてしまったのだと思います。
自分がしたことは、改善しようとしていた夫婦関係にもトドメを刺してしまう行為だったのかと思うと食欲もなくなり、フラメンコ仲間にも心配されるほどみるみる痩せて行きました。
いよいよ引っ越しとなり、その日はなんとか引っ越しを終えましたが、せっかくの新居でもふさぎ込むことが多くなりました。自分の願いが叶ったのに、気分は絶望的で、何もやる気が起こりません。毎週の抗がん剤も、足を引きずりながらなんとか通う状態でした。
あまりに気分がつらくて医師に相談したところ、精神腫瘍科に相談してみてはどうかと提案を受けました。がんに罹患したことで気分が落ち込んでしまう人に向けメンタルサポートをしている科。
わたしの悩みは夫婦関係でしたが、この気分の落ち込みは抗がん剤によるものもあるだろうということで、抗がん剤を点滴している時間を利用して、カウンセラーの先生と話をさせてもらうことになりました。
わたしが引き起こしたこと、といえばそれまでですが、わたしの中では今まで漠然として言葉にならなかったことを解決したくて必死でした。それが逆に夫との関係を悪化させたことがショックでたまりませんでした。これを機に、育児のことや夫婦関係など、心にしまっていた悩みが噴出し、一気に不調をきたすようになってしまいました。
それと同時に抗がん剤のしびれもじわじわと増していきます。必要以上に恐怖心や不安を覚えるようになり、毎回ビクビクしながら抗がん剤の投与。しびれに恐怖心をいだきながら、なんとか食事を作って、あとは横になっているような日々が続きました。
病気を機に、さまざまなことが噴出し、一気に闇の中に入ってしまったわたし。先の見えない不安に襲われていたこの時期が、一番つらかったなと思います。
季節は秋。抗がん剤は、あと残すところ数回まで進んでいました。
<文/塩辛いか乃 監修/沢岻美奈子(沢岻美奈子女性医療クリニック院長)>
【監修者:沢岻美奈子】
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医。神戸にある沢岻美奈子女性医療クリニックの院長。子宮がん検診や乳がん検診、骨粗鬆症検診まで女性特有の病気の早期発見のための検診を数多く行なっている。更年期を中心にホルモンや漢方治療も行い女性のヘルスリテラシー向上のために実際の診察室の中での患者さんとのやりとりや女性医療の正しい内容をインスタグラムで毎週配信している
塩辛いか乃
世の中の当たり前を疑うアラフィフ主婦ライター。同志社大学文学部英文学科卒。中3繊細マイペース息子と20歳年上の旦那と3人暮らし。乳がんサバイバー(乳房全摘手術・抗がん剤)。趣味はフラメンコ。ラクするための情熱は誰にも負けない効率モンスター。晩酌のお供はイオンのバーリアル。不眠症。
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@yukaikayukako
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