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「実写化だけはやめて」「コスプレ感」の声もあったが…『推しの子』実写化への評価が“絶賛”に転じたワケ

二宮和也がラスボスを演じる説得力

 さらに、キャスティングそのものが絶賛されたのは、12月5日に7~8話の配信スタートと共にSNSでも発表された二宮和也だ。二宮が演じるラスボス的な役回りの「カミキヒカル」は、実写ドラマ版での登場シーンはまだごくわずかではあったが、その少ないセリフからも原作にあったサイコパス性が醸し出されており、本格的に物語に割り込んでくるであろう実写映画版への期待を高めることができる。  また、主人公の2人である「星野アクア」役の櫻井海音と「星野ルビー」役の齊藤なぎさもまた、役にピッタリなキャスティングおよび演技が称賛されており、2人ともがなるほど「齋藤飛鳥と二宮和也の子ども」に見えるほどのルックスの美しさと、絶対的なアイドルの資質を感じさせる様は、もはや奇跡的にも思えた。

新たな驚きと感動のあるアレンジも

 脚本に原作者の意向が反映されていることも重要だ。井元プロデューサーによると、赤坂アカは脚本開発をはじめ、さまざまなタイミングで意見を言い、時にはメタフィクション的な表現を面白がって、自身からさかんにアイデアを出していたそうだ。前述した原作で問われた「原作改変」を、実写ドラマという媒体で示すことで、むしろ真正面から向き合うという構図もある。  ドラマ独自の構成の上手さにも感服した。原作漫画を大胆に刈り込みタイトに仕上げつつも、絶対的に大切な部分は外さない取捨選択、提示するエピソードの順番の変更、またドラマ独自のシーンなどが、キャラクターの心理描写をより鮮烈にし、原作やアニメを楽しんだ身としても新たな驚きと感動があったのだ。  例えば第7話にて、ルビーがとあるショッキングな事実を知る過程が、過去のエピソードの挿入もあってより切実に胸に訴えてくるものになっている。さらに第8話での、原作では有馬かなのことが良くも悪くも嫌いになってしまいかねないエピソードが、ほとんど大筋を変えないまま、彼女へのヘイトを溜めすぎないような調整がされており、かつ今後のキャラクターの関係性を追いたくなる改変として、大いに肯定したくなった。  また、劇中で作られる映画「15年の嘘」の設定にもとある大きな改変があり、現時点では賛否を呼んではいる。しかし、ドラマから続いて劇場公開される映画では、きっとその意図もわかることだろう。
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映像作品の新境地を目指している
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