「医療用はちみつ」=「メディカルハニー」との出会い
実を言うと、子どもの頃からもう何十年のつきあいだったはちみつとの関係に、数年前、革命的変化があった。そのことが、これまでのはちみつとのつきあい方をふりかえり、この本をまとめるきっかけとなったと言っていい。

前田さん宅は、はちみつが並ぶ“おうち薬局”が
ある時期、突然しつこい喉のイガイガに悩まされるようになった。
それまでだったら原因が何であれ、寝る前に、マグカップに熱いお湯を入れ、はっか油を垂らして喉にかざすスチームバスのトリートメントをすれば、翌日か翌々日にはすっきりと元通り。
ところが、どんなのど飴よりも頼りになっていたはずのはっか油なのに、今度ばかりは喉のイガイガが何日経っても治らない。いったいどうしたことなのか。
そこでふと思い出したのは、「はちみつが傷んだ肌や粘膜の修復を助ける」ということだ。あれた肌の修復に、いつもの顔のはちみつパックがあれだけ効くことを考えたら、はちみつをもっと早く喉に試さなかったのは不覚であった。
さっそく、そのとき手元にあった中から、温かい日向のような味の大好きなクローバーのクリームはちみつを選び、寝る前にひとさじ舐めて床につく。そうしたら翌日は、数日ぶりに快適な目覚めがやってきた。万歳!
ところがその後しばらく、何とも不思議な感覚が続いた。どうもイガイガの原因は完全に取り除かれているわけではないようなのだ。
はちみつをなめているかぎり、症状をある程度抑えることはできるのだけど、「イガイガ」や「ひりひり」が、くすぐったいような「ちりちり」になるぐらいで、完全に喉のことを忘れ去ることができない日が多い。
そんなとき、ハッと思い出したのが、十年ほど前、ニュージーランドに住んでいる大学時代の友人が電話をかけてきてくれたときに聞いた、あるはちみつの話である。
「あのね、マヌカハニーっていうの、知ってる? マヌカっていう植物は、ティートリーに似ているんだけど、やっぱりちょっと違うの。こっちではね、はちみつというとマヌカなのよ」
私が精油やはちみつに目がないことを知っていた友人は、そのはちみつの話をした後すぐに、香りがとっても似ているとカヌカの精油をペーパータオルに染みこませ、手紙といっしょに送ってくれた。興味津々でいそいそ封を切ると、濃いエメラルドグリーンの強い海風のような香りがあふれ出た。
なんでもマヌカのはちみつは、れっきとした病院でお医者さんたちが難病の治療にまで使うもので、効き目の強さによって数種類のグレードに分類されているのだという。