──子どもが自分で学ぶという点で、こだわったポイントはありますか?
フクチ「子どもが最後まで読みきれる本にしたい、という思いがありました。大人向けの内容を子ども用にかみ砕いて説明するのではなく、
子どもが楽しんで、自分ごととして読めるようにしたかったんです。そこで、一方的に大人から教わる形ではなく、友達とやり取りする中で学んでいく形で、ストーリーを展開しています。
実際に小学生と中学生のお子さんに漫画のラフを読んでもらい、
意見を聞きながら見せ方も変えていきました。子どもたちの感想を聞くことで、『この言葉がわかりにくい』といった、リアルな反応も知ることができました。どういう言葉を使えばより伝わるのか感覚をつかめましたし、マンガにも反映できたと思います」
──シリーズ第3弾となる今回も、「おうち」での性教育にこだわった理由を教えてください。
フクチ「今回の漫画の舞台は主に学校になるので、厳密にいうとおうちではないのですが、シリーズとしておうちでの性教育に役立つように描きました。
というのも、
現在も多くの学校ではじゅうぶんな性教育を行えていないからです。小学校5年生の理科の学習指導要領では『人の受精に至る過程は取り扱わないものとする』(*1)とあります。また中学校1年生の中学校保健体育科の学習指導要領では『妊娠の経過は取り扱わないものとする』(*2)とされているのですが、
これを『性交については触れない、触れてはいけない』と捉えている学校も多いんです。いわゆる『はどめ規定』ですね」

「性交については触れない、触れてはいけない」と捉える学校も多い、いわゆる「はどめ規定」
(*1)
小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編第5学年の内容より
(*2)
文部科学省『学校における性に関する指導について』中学校保健体育科(保健分野)<第1学年>学習指導要領及び解説より
──学校現場の「はどめ規定」は度々議論に上がっていますね。本来は最低限指導すべきものを記載したものであって、必要に応じて発展的な内容を教えることを禁止するものではないとか。教えてはいけないわけではないけど、現場で教えるのが難しいという現状もありますよね。
フクチ「近年、徐々にこの状況は変わりつつあって、子どもにとって必要な知識を届けようとする教育現場の動きも出てきています。しかし、すべての学校ではありません。より発展的な内容を教えるためには、学校全体での共通理解や、保護者や地域の理解を得ることなど、
現場の先生方が超えなければならない壁が多く、すぐに変化は望めない問題です。
それでも、世の中では性に関わる問題が日々起きています。子どもが被害者に、時には加害者となるニュースを目にするたび、学校が変わるのをただ待つわけにもいかないと感じています。せめて、おうちでできることを伝えたいという思いがあります」