K-POPファンからスタッフが猛攻撃 “シュシュ女”事件に見る「推し活」のゆがんだ情熱とエンタメ産業の限界とは?
エンタメから「客」が消える日
さて、このようにファンダムを中心にしたビジネスが支配的になったエンターテインメントで、いったい何が起こり得るでしょうか?
筆者は、かねてより演者とファンの中間に存在すべき「客」の不在を懸念しています。「客」とは普段無関心であっても、パフォーマンスや作品ごとに是々非々で評価を下す、シビアでスマートな消費者であると定義します。
しかしながら、オタ活や推し活の名のもとに「客」の存在は薄れ、エンターテインメントは鑑賞するものから、応援するものへと変化しています。
その応援も、細川バレンタイン氏が指摘するように、決して寛容なものではありません。いつ激しい攻撃性に転じるかわからない恐怖がファンダムの燃料なのです。
自然界から里山が失われ野生動物が凶暴化したのと同じ構図が、エンターテインメントの世界でも起きているように感じます。
今回のシュシュ女騒動は、推し活文化やファンダムビジネスに潜むリスクを浮き彫りにした象徴的な事件であり、エンターテインメント文化にとって決定的な禍根を残したのではないでしょうか。
<文/石黒隆之>石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4


