――長谷川さんの作品をXでたくさん拝見しましたが、バラの作品が多い印象です。バラがお好きなのでしょうか?

こちらは、「森永ミルクキャラメル」5個を使って製作したバラ
長谷川:パティシエの業界では飴細工やチョコ細工、シュガー細工などすべての練習で最初にバラをつくることが多いです。僕らのイメージで、バラは基礎中の基礎なんですね。だから、バラが多いのかもしれません。
――ということは、我々のような素人もバラは挑戦しやすい?
長谷川:そのはずです、最初にやるものなので。
――今まで、長谷川さんはどのくらいのバラをつくってきましたか?
長谷川:何輪つくったのかなあ……。たぶん、日本で一番つくっているんじゃないですかね? パティシエ歴は11年目になるので、そこから鑑みると一万輪とかは全然超しちゃっていると思います。
――改めて、長谷川さんの経歴を教えてください。Xのプロフィールに「菓子細工の大会で日本1位をとった」と書いてありますが、これはシュガークラフトの大会ですか?
長谷川:そうです。
――改めて、シュガークラフトとはなんでしょうか?
長谷川:起源は諸説あるんですが、一番有名なのはフランスでナポレオンが始めたと言われている説。ほかにも、イギリスの王室が始めたという説もあります。
大昔のウェディングケーキの主流は3~4段で、お砂糖とお酒のシロップをガンガン使って腐りにくくしていたんです。で、1段目はケーキ入刀をしたその日に食べる。2段目は、結婚式に出席できなかった人たちに後日配る。そして、3段目はたとえば1年後の結婚記念日に食べる。
――えーっ、1年後!?
長谷川:日をもたせるためにお酒と砂糖をガンガンに入れたケーキをつくって、さらにお砂糖のクリームでコーティングしていたんです。密封状態にすることで腐りにくくし、1年後とかに食べたんですね。それがあるとき、「装飾して豪華に見せよう」という流れが貴族のなかで始まったんです。
――腐らせないプラス、豪華にしようということですね。
長谷川:そうした起源でスタートし、現在ではさまざま部門に分かれて多くの技術が生まれています。今、海外のウェディングケーキとしてつくられるものの多くはシュガークラフトと言われています。
――パティシエとして、長谷川さんは主にシュガークラフトをつくっているのですか?
長谷川:というわけでもないんです。ただ、僕は「社団法人日本シュガーアート協会」の副会長で、シュガークラフトを日本に普及させる役目を担っています。その一環としてシュガークラフトの作品を製作、SNSで広めているという段階ですね。
――それらの作品をつくるとき、意識していることはありますか?
長谷川:どれだけ本物に寄せられるかです。今回でいえば、本物のバラとどれだけ同じようなつくりにできるか。かつて、先輩に教えてもらった方法は完全に菓子細工としてのつくり方でしたが、今は本物のバラを観察・分解をしながらまったく同じように組み上げる……という方法をとっています。
――それは、完成品を見たら納得です。「本物じゃん!」と驚きましたからね(笑)。ちなみに、Xで見た作品を購入することは可能でしょうか?
長谷川:もちろんです!「SUCRETIER(シュクレティエ)」というパティスリーブランドを立ち上げたので、そこから「Xで見たあの作品を欲しい」とオーダーしてください。
――ハイチュウでつくったバラ、買えるんですね(笑)。