個人的な特徴というよりは、むしろ鬼滅ファンが未視聴層を『鬼滅の刃』から遠ざけている可能性も否定できない。2020年に『劇場版「鬼滅の刃」 無限列車編』が上映された時、今回同様に『鬼滅の刃』が盛り上がりを見せていた。ただ、その際に「まだ観てないの!?」「人生損してるよ!」と言われる“キメハラ(『鬼滅の刃』ハラスメント)”に辟易した人も多かった。

画像:『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』公式サイトより
そして、今回も例に漏れず、キメハラに苦しんでいる人は少なくない。キメハラを回避するために話題に気を付けても、コンビニに行けば『鬼滅の刃』のコラボ商品が並び、ショッピングモールに行けば『鬼滅の刃』のコラボイベントが実施されている。
社会全体が『鬼滅の刃』の視聴を前提にデザインされており、未視聴層からすればどこに行ってもキメハラの餌食になってしまう。日々、キメハラ被害に遭うことで「絶対見ない!」という反発心が肥大化してしまった結果、距離を置いている人もいるはずだ。
『鬼滅の刃』は血しぶきが多く、“サイコロステーキ先輩”(油断して鬼に惨殺された鬼殺隊員の少年)よろしく、胴体がばらばらになるシーンも散見される。作品のトーン自体が暗く、心を休めて視聴できる内容ではない。「数話見たけど離脱した」と内容が合わずに見なくなった人も少なくない。

画像:『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』公式サイトより
グロさだけではなく、主人公・竈門炭治郎の親友・我妻善逸に嫌悪感を示す人は結構いる。善逸は臆病な性格をしており、通常パートでもメソメソしているうるさいやつ。戦闘シーンになれば、そのうるささはより増量され、泣き叫びまくる。仕事で疲れているビジネスパーソンからすれば、喚き散らす善逸はストレス要因でしかなく、耐えられずにリタイアする人も少なくない。
善逸のような“弱虫キャラ”は視聴者の共感を呼び、成長する様子がわかりやすく応援したくなる。実際、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』では、わめくことはなく勇敢に戦う姿を見せており、その剣さばきに魅了された人は多い。とはいえ、そこまで我慢して視聴を続けることは容易ではない。善逸に厳しい視線を向ける気持ちもよくわかる。
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、タイトルの通り第一章である。残り2作品が今後上映されるが、その時に今の未視聴層はどのように変化しているのかに注目しつつ、上映される時を心待ちにしたい。
<文/浅村サルディ>
浅村サルディ
芸能ネタ、炎上ネタが主食。好きなホルモンはマキシマム ザ ホルモン。