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SNSで話題の「K」と「M」の正体って!? 百合カップルの“恋が愛に変わる1年間”が尊い

作中では描かれない2人の背景

――KとMという名前以外に、誕生日や設定などがあれば教えてください。  誕生日は決めていませんが、「1日違い」という設定はあります。お祝いは夜中の23時から25時のあいだにふたりで一緒にしているかもしれません。  作品集では見せていないのですが、KとMには細かい背景があります。Kは祖母が着物の職人、父は大手衣類会社の社長でしたが、会社が多角経営に失敗し、経営が傾いて他社に併合され、父は過労で亡くなってしまいます。その後、Kは大学を辞めて、母と共に祖母の家で暮らしながらカフェを経営しています。もともと裕福な家庭出身ということもあり、一般よりは少し余裕のある生活をしています。  ちなみにKは着物にはまったく興味がなく、むしろ今がいちばん自由を感じている状態です。家のしがらみも、興味のない勉強も手放して、自分が好きなカフェの仕事をしながら、お金に困ることもなく、まさに“都合のいい人生”を送っているキャラクターです。 かも仮面『KとM かも仮面初作品集』(扶桑社) 一方のMは、両親が離婚し、祖母に育てられました。祖母の死後は頼れる人もおらず、なんとなく大学生活を続けているという状況。ふたりの出会いを描いたマンガで、風邪で倒れたMが泣いていたのも、祖母のことを思い出していたからですね。祖母が「大人になったら譲ってあげる」と言った振り袖は、今では大切な形見となっています。学費や生活費は父が一部負担していますが、基本的にはアルバイトをしながら自立した生活を送っています。  やがてKと出会い、Kの家でバイトをしながら、祖母の手伝いやカフェの仕事を通じて、着物や人々の想いに触れるようになります。そして次第に、Kの祖母の後継者としての道を歩んでいく……そんな設定があります。  このふたりの物語は、元ボンボンのイケメンお嬢様と貧乏な女学生が恋に落ち、夢を見つけて頑張るという、どこかベタで愛おしいシンデレラ・サクセス・ラブストーリーなんです!

試行錯誤を重ねた結果描かれたKとMが歩む“未来”とは

――この先、ふたりはどんな未来を歩んでいくのでしょうか。  実は最初、MがKの祖母の養子になり同じ苗字になることで、現状同性婚ができない日本において“家族”としての形を成立させる案も考えていました。でも、友人から「いつか同性婚ができる未来を信じて、養子縁組という選択を取っていない人もたくさんいる」と聞いて、自分の創作でさえ少しネガティブな発想だったかもしれない……と反省しました。また、リアルタイムで夫婦別姓の話も出ているので、養子に入って同じ苗字になるという発想そのものが、少し時代遅れなのかもしれないと考え直したんです。  なので、この世界の日本は同性婚ができ、KとMはごく自然に結婚し添い遂げます。Kはカフェを経営し、Mは祖母からさまざまなことを学びながら、その跡を継いでいきます。結婚式は日本式で、伝統の継承というテーマとLGBTの話を交差させながら、過去と現在をつなぐ物語にしたいと思いました。 ――お気に入りの1枚があれば、理由とあわせて教えてください。  ふたりが初めてキスをする、コインランドリーのシーンがいちばん気に入っています。背景に苦手意識があるのですが、思いきって挑戦して、思い通りに描けたことがまず嬉しかったです。全体的な演出も、自分でも「うまく描けたな」と思える仕上がりで、自画自賛してしまいました。そして、尊敬しているアニメーターさんから「上手いです!!」とDMをいただいたのも大きな思い出です。 かも仮面『KとM かも仮面初作品集』(扶桑社)――ふたりの距離感を描くとき、特に気を付けていることは?  基本的にKは、Mに常にベタついて、ちょっかいを出していますね。付き合う前のMは「こいつ、距離感おかしくない!?」と感じつつも、ときめいてしまう。付き合いはじめてからは、感情をどう受け止めるか、どう返すかに慣れてないので最初は戸惑いながらも、少しずつ受け入れられるようになっていく――そんなふうに描いています。  先ほどもお話ししたように、この作品はベタなシンデレラ・サクセス・ラブストリーです。Kはあまり変化がありません。主人公として感情が揺れ動き、成長していくのはMなんです。
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日常を描く上で大切にしていること
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■作品情報
・タイトル:『KとM かも仮面初作品集』
・発売日:2025年8月8日
・著者:かも仮面
・定価:2860円(本体2,600円+税)
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