――感情をセリフではなく、“表情や仕草”で伝えるとき、大切にしていることは?
目線ですね。そして“ふたりいる”からこそ、セリフがなくても感情のやりとりが成立すると思っています。例えば、一人が拗ねた顔をしていても、もう一人が「ごめん!」と手を合わせていたら、「何か怒らせるようなことをしたのかな」と自然に想像できますよね。何があったのかは見る人に委ねて、細かい説明はあえて省き、想像の余白を残すようにしています。すべてを伝えようとはせず、伝わらなくてもいい、そんな“潔さ”が大事なのかもしれません。
――イラストのアイデアは、どんなときにふっと浮かんできますか?
小説を読んだり、MVを観たり、何か新しいものに触れたときですね。「こういうとき、KとMはどうするんだろう?」と想像します。また、流行のコーディネートを調べたり、街でおしゃれな人を見かけたときに「KとMに着せたいな」と思うことがあります。そこから「それなら、どんなシチュエーションでこの服を着るんだろう? どこにいる? 何をしている?」と想像が膨らんでいって、「描きたいな~」という形に変わっていきます。
――「かも仮面さんらしさ」って、どこにあると思いますか?
実は私も、それを探している最中です。これまでは「絵の仕事が欲しい」、「有名な絵師になりたい」といった気持ちでひたすら描いてきました。でもこの業界で10年近く働くうちに、“ナンバーワン”ではなく“オンリーワン”になることが、仕事を得るにも、知ってもらうにも、いちばんの近道だと実感するようになって。
だから今まで描いた絵をまとめた作品集ではなく、オリジナルのキャラクター作って、それをずっと描くことにしました。最初の1枚目にはよくわからなかった“私らしさ”も、2枚、3枚と描いていくうちに、点と点が繋がってようやく一本の線になってきたように感じています。
必要以上に描き込まない、説明もセリフも感情表現もできるだけ抑える。色も控えて、シンプルに。その中で“滲み出てくる何か”が、「かも仮面らしさ」なのかもしれません。
音楽を切って横になったときに聞こえてくる自分と部屋の音。消したくても残る気配。そんな“素のもの”のような、静かな存在感。今はまだ、それが何なのかはっきりとはわかりません。布の後ろに何かあるのはわかるけれど、それが何かはまだつかめていない——そんな感覚です。
――最後に、この作品集を手にとってくださった読者へ、ひとことお願いします。
小説って自由なんですよね。登場人物の声も顔も、読む人によってそれぞれ違ってくる。この作品集はそこまではありませんが、できるだけ説明やセリフを控えて、その分、皆さんが自由に遊べる“余白”を残しています。「この子たちは今、何をしているんだろう?」「どんな気持ちなんだろう?」——そんなふうに自由に想像しながらページをめくってもらえたら嬉しいです。
そして、ときどきこの本を手に取って、パラパラと眺めて、ほんの少しでも心がほかほかするような時間をお届けできたなら、何よりです。ありがとうございます。
【かも仮面】
アニメやゲームなどの、イラストやキャラクターデザインを多数手掛ける。
担当作品はアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』キャラクターデザイン原案、アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』プロダクションデザイン、「hololive 2024 brand movie」キャラクターデザイン、ライトノベル『忘れえぬ魔女の物語』装画など。その知名度と評価は急上昇中。いま目が離せないイラストレーターの一人である。
X:かも仮面(
@sangsilnoh)
<取材・文/女子SPA!編集部>