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「なぜ母は0歳の私を捨てたのか」25歳女性がたどり着いた“実母の衝撃の過去”。育ての母からは虐待も<前編>

当時を知る人々をあたっていった

 まるさんはその後も、特別養子縁組を組んだ際に手続きを行った家庭裁判所や、自身が預けられていた児童養護施設に問い合わせ、当時の記録を得ようとした。  ただ、家庭裁判所では、資料の保存期間が過ぎていた。実母の現在の戸籍については、特別養子縁組により親子関係が戸籍上も終了しているため、まるさんには閲覧請求する権利がなかった。  児童相談所の職員は、実母がまるさんを妊娠する前に実父と破局していたことや、実母は両親と不仲で経済的余裕もなかったことから施設を頼ったことなど、当時の状況を話してくれた。ただ、話を聞いても完全に事情をのみ込むことはできず、むしろ実母に直接確かめたいという想いは高まっていった。  そこで意を決して、実母の元夫に手紙を送ることにする。従前戸籍に記載されていた本籍地(つまり実母の元夫の本籍地)に手紙を送ったところ、数日後に電話がかかってきた。  実母の人物像が明確になると思うと、一気に緊張が走る。結婚から離婚に至る経緯や、現在の実母の状況など、尋ねたいことを整理して折り返しの連絡を入れた。  電話口の男性は、物腰の柔らかそうな声が印象的だったが、「これ以上つらい思いをして欲しくない、もうここで実母を探すのはやめたほうがいい」と釘を刺した。  ただ、まるさんとしても、ここで引き下がるわけにはいかない。「どうしても知りたい」と繰り返し懇願すると、徐々に一連の経緯を語り始めた――。

実母の元夫から知らされた衝撃の事実

電話 実母と男性の出会いはパチンコ店だった。当時、実母が店員として働いており、ナンパのような形で知り合って交際に発展する。  交際当時、実母からまるさんの特別養子縁組の経緯について知らされていなかった。まるさんの存在を初めて聞いたのは、実母の妊娠が判明してからだったという。言い換えれば、実母はまるさんを施設に預けて、自ら面倒を見ることはなかったものの、その傍で新しい男性との関係を深めていたことになる。  元夫の男性も、前の交際相手との間に子どもがいると判明した時点で、妊娠してからすでに時間が経過しており、子どもを堕ろす選択は難しかった。その後2人は、前述したように3人の子どもに恵まれるが、円満な生活は突然終わりを迎える。  実母は、末っ子が生まれた半年後、前触れもなく家を出て行ったそうだ。  当然、男性は、何度も実母に連絡を取るも、実母が家に戻ることはなかった。「自分の自由がない」と家庭に戻ることを拒み続け、それから2年近く経つと連絡も途絶えた。  かつてを振り返り、男性は「彼女(まるさんの実母)が憎い、できれば思い出したくない」と漏らす。そう聞くと、まるさんは怒りとも虚しさとも絶望とも括れない、筆舌できない想いが込み上げた。
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実母の家庭環境が徐々に明らかに
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