――社会の中で見たときに、「友達と遊ぶのが苦手そう」「すぐケンカをしてしまう」「細かい作業にイライラしている」といった子どもの性質に対して、「発達の問題があるのかも」と不安を感じる親御さんもいると思います。
さわ先生:その不安の裏には、親の価値観も関係していると思うんです。たとえば、「友達とは仲良くすべき」「細かいこともきちんとできたほうがいい」といったものなどもそうです。親自身がこれまで何を大切にして生きてきたかという視点だけで子どもを見ていると、「発達に問題があるかも」と感じてしまうことがあります。

※画像はイメージです (以下、同)
――たしかに、親の価値観で判断している部分もありますね。
さわ先生:親が子どものことで不安になるのは自然なことです。ただ、どこまでが親の不安で、どこからが子どもの問題か一度線を引いてみてほしいのです。冷静に考えてみると、親が勝手に不安になっていただけで、子どもには何の問題もなかった、ということもよくあります。まずは、自分の価値観や不安を子どもに重ね合わせない、という点を前提として考えてみてほしいですね。
――なるほど。
さわ先生:そのうえで、発達ユニークな子の中には癇癪(かんしゃく)があったり、気持ちの切り替えが極端に苦手だったりする特徴がある子がいるのも事実です。ただし、そうした特徴があるからといって、当てはまる子全員が「神経発達症」と診断されるわけではありません。それでも、癇癪や気持ちの切り替えなどの点で、親にとって「育てにくさ」を感じることはあると思います。
――「育てにくさ」というのも親の感覚によるので、基準がわからないです。ポイントのようなものはあるのでしょうか。
さわ先生:確かに感覚的な部分はありますが、「うちの子育てにくいな」と感じることや、兄弟がいる場合なら「上の子と比べて下の子はやけに育てにくいな」「全然夜寝ないな」といった違和感は、その子の発達ユニークさに気づくポイントになります。繰り返しになりますが、だからといってその子全員が診断されるわけではありません。しかし、親が感じる、こうした違和感は、発達のユニークさを知る手がかりになると思います。
――子どもの発達に不安を感じたときは、「なんとなく不安」という理由だけで精神科などの病院に行ってもいいのでしょうか。
さわ先生:問題ありません。先生に話した結果、「お母さん、心配しすぎですよ」と言われるかもしれませんし、「発達の特性があるのかもしれませんね」と言われるかもしれません。また、「こうしてみるといいんじゃないですか」とアドバイスをもらえることもあります。心配や不安を感じたら、病院に限らず、専門家や保健所、児童相談所などに相談してみるのがよいと思います。