――診断の有無にかかわらず、子どもに発達の特性があった場合、親として持つべき視点はありますか。
さわ先生:たとえば、宿題ができない・出せないといった発達の特性による困りごとが出たときに、単に「怠けだ」とか「わがままだ」と捉えて片付けようとしないことですね。「怠けてるでしょ」と言ってしまえば、そこで終わってしまい対策のしようもなくなります。「わがまま言うな!」と叱って治るならいいですけど、それで治らないから、子ども自身も困っているんですよね。
――そうですね。
さわ先生:日常生活で困ったときは、「発達のユニークさゆえに、この子はみんなと同じようにできないのかもしれない」と捉えることが大切です。そのためには、子どもの発達にはユニークさがあり、一人ひとり違うという知識を大人が日頃から持っておくことが重要です。
努力や根性でなんとかするのではなく、いわゆる「普通」が普通にできないのが発達のユニークさです。子どもを変えようとせず、無理をさせすぎないことが、発達ユニークな子のサポートでは非常に大切です。そのうえで、医師や専門家、学校の先生に相談していくのがよいと思います。
――子どもの発達にユニークさがあった場合は、親としてどんなサポートができますか?
さわ先生:ユニークさは一人ひとり違うので一概には言えませんが、「その子に適切な課題が与えられているか」という視点は常に持っておくべきです。人間は、少し頑張ればできることや簡単なことはやりやすいですが、その子にとって難しすぎる宿題や高すぎるハードルの課題では、どんなに頑張ってもできません。ですから、まったく宿題をやらないときに「なんでできないの!?」と思うのではなく、「この課題はこの子にとって適切なのかな?」という視点で見ることが重要です。
――何より本人が困っているという視点を持つことですね。
さわ先生:知的能力に問題がない子でも、IQが80の子もいれば120の子もいます。ですが、学校は基本的にみんな同じ宿題を与えるので、できない子が出ても当然です。そんなときは、病院の先生や学校の先生に相談し、IQや集中力の持続可能時間などの指標を参考に「少し頑張ればできる課題」を設定してもらう。たとえば、宿題を全部やるのは難しいなら半分に減らす、一緒にやってみる、といった工夫ができます。できることを少しずつ積み重ねることで、子どもは少しずつハードルを越えられるようになります。