――今までで特に反響の大きかった動画はどれですか?
中村:以下の二つの動画になります。
①「お悔やみの言葉で適切なのは?」(2025年3月26日投稿/視聴回数:約326万回、いいね数:約3300)

お悔やみの言葉にもいろいろ種類があります
【動画内のやり取りを抜粋】
従業員A:このたびは……。(スタッフがご遺族にお悔やみの言葉を伝えるも、語尾の言葉を濁している)
従業員B:その濁す感じ、よくないよ。(視聴者に向かって)実は、お悔やみの言葉っていろいろ種類があるって知っていますか? 誰に言うとか、関係性で変わるんです。一つ目は「ご愁傷様です」。「ご愁傷様です」は、ご遺族に口頭で言うとき。ちなみに「お悔やみ申し上げます」は、ご遺族に文章で伝えるときの言葉です。二つ目は~
②「自分の葬儀で流してほしい曲を教えてください」(2025年5月23日投稿/コメント数:724)

これを考えるのは意外と楽しいです
【動画の内容】
各スタッフが“自分の葬儀で流してほしい曲”をそれぞれ紹介。具体的な曲名は以下。
・安室奈美恵「ありがとう」
・山下達郎「素敵な午後は」(“よく運転しているときに聴いているから”という理由で選出)
・DREAMS COME TRUE「何度でも」(“つらいときにこの曲を聴いて立ち上がってきたから”という理由で選出)
・Hump Back「拝啓、少年よ」(“「遠回りくらいがちょうどいい」という歌詞が好き”という理由で選出)
中村:体感としては「自分の葬儀で流してほしい曲~」の動画で、もっとも大きな反響を感じました。自分が流してほしい曲ということで、コメントしやすかったのかなと思います。
――こうした葬儀マナーを啓蒙する場合、YouTubeで発信する選択肢もあったかと思います。御社がTikTokを選んだ理由を教えてください。
中村:葬儀への興味がない人にも触れやすいという理由で、TikTokを選択しました。
――TikTokを流し見していて、ふと「自分の葬儀で流してほしい曲は?」という動画が“ポンッ”と出てきたら「おっ?」って手が止まりますもんね。
中村:自分に興味のないテーマでも自然とリール動画で上がってくるところが、TikTokの一番の良さかなと思います。ただ、メインであるTikTok以外にYoutubeとInstagramでも同内容の動画は投稿しています。それぞれの登録者数(9月9日現在)は以下です。
・TikTok:およそ10,800人
・Instagram:1783人
・YouTube:613人
――TikTok動画を見た人たちからは、具体的にどのような反響が寄せられていますか?
中村:「勉強になる」「プリクラで遺影をつくれるって知れてうれしい」という声が寄せられました。

状況によってはプリクラを遺影写真に使うのもアリです
――今年5月に「遺影写真 プリクラでも使用可能!?」というTikTokが上がっていましたね。この動画の内容には驚きました(笑)。
中村:それぞれの動画に付随して興味深いのは、下部に設けられているコメント欄です。葬儀は個人の価値観、地域、宗派などでさまざまなやり方があるので、個々の体験をもとにコメント欄で議論が起こっているケースが多いんですね。
当初、私どものほうでこのような現象が起こると想定はしていませんでした。ただ、今では「うちの地域だと~」「私は~」など動画をきっかけにご自身の考えやご経験を気軽にコメントし、葬儀についてフランクに意見が交わせる場になればよいと思っています。
――TikTok動画を発信するようになってから、お客様の葬儀に対する知識が上がってきている印象はありますか?
中村:現場の感覚では、まだ変化は感じていません。日常生活を送るうえで葬儀の知識は不要ですので、知識というよりも葬儀社への親しみが増していけばいいと考えています。その結果、「なにか心配なことがあったら葬儀社に気軽に相談してみよう」という雰囲気になれば、なによりです。