モデルやコメンテーターのイメージの強いアンミカだが俳優もやっている。あの強烈なキャラでは様々な役を演じるというよりは、そのキャラを生かした役をオファーされるという印象である。
『もしがく』こと『もしも世界が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系、水曜夜10時~)はまさにそれ。とうの立った(言い方)場末のダンサーで性格はきつめ、何事にもめげないパトラ鈴木をアンミカは演じている。パトラは腰に爆弾を抱えながらも厚化粧して舞台に立ち続けている。

『もしがく』9話場面写真©フジテレビ
女を捨てず(言い方)前向きに生きるパトラは年下の劇場の用心棒・トニー(市原隼人)とつきあっている。目下、このドラマで最も評価の高い、おいしい役を演じている市原隼人と、アンミカが恋人役という皮肉なカップリングは狙いなのか偶然なのか。市原隼人が見たくてドラマを見ると、漏れなくアンミカとの2ショットがついてくる。しかも熱烈なシーンが。
『もしがく』第9話はトニーとパトラの回だった。どん詰まりで用心棒というような暴力にものを言わせるような仕事しかないトニーだったが、劇場がストリップではなくシェイクスピア劇をやることになったとき、たまたま役者を手伝うことになる。真面目な性分で、やりはじめたら徹底的に稽古をして臨むため、演出家のクベ(菅田将暉)を驚かせるほど演技が上達する。

『もしがく』9話場面写真©フジテレビ
だが、9話では、劇場のオーナー(シルビア・グラブ)のかなり危険なブツ(昆布茶ババロア)の取引にしぶしぶ行くはめに。そのせいで警察に追われることになる。劇場関係者とバレたら公演に迷惑がかかるので、パトラにつきまとう人物という体(てい)にする。パトラは「この変態 顔も見たくないわ」とトニーの頬をピシャリと叩く。アンミカも市原隼人も迫真の悲しみに満ちた顔をしながら別れ別れに……。
正直、茶番もいいところなのである。トニーが常連客ということにするのはその場しのぎ過ぎるだろうし、捕まえた警官は、警官をクビになった大瀬(戸塚純貴)で、「どこの管轄のかたですか?」と刑事(小林隆)に聞かれるも、トニーが気を利かせて暴れたことで有耶無耶になる。リアルではない。でもこんな茶番が尊く見えるのは、市原隼人とアンミカが至極真面目に演じているからだ。
アンミカは真っ白い衣裳を、さすがパリコレモデル、このうえなく清潔感あふれて見えるように着こなしている。安普請の劇場楽屋の裏のお茶場でアルマイトのやかんを使って生姜茶を入れる姿は、セレブ感というより清楚。場末で生きて貧しくても誇り高く、情もある人物だと印象づける。きっと彼女はとっても演技派で、アンミカというキャラクターも徹底的に演じているのだろう。