今年のキングオブコントで審査員をつとめていたシソンヌのじろうさんが、しずるさんに対しての「ウケてなかったんですよ」という言葉や、2023年のM-1で山田邦子さんがさや香に放った「最後のネタ、全然良くなかった」という声は、その場の観客のみならず視聴者からも拍手喝采でした。
彼らのネタに対して視聴者が抱いたモヤモヤ感を、審査員がその立場でズバリ代弁してくれたという爽快感がありました。

DVD『M-1グランプリ2018』(よしもとミュージック)
過去の『THE W』での、無理やりいい部分を見つけ褒めることしかしない審査員に、視聴者のフラストレーションがたまるのは当然のことです。消化できなかった視聴者の不満の矛先がSNSに向かい、『THE W』自体への悪評に繋がっていったように思います。
ですが今回は何の不満も残らないいい大会でした。それは、「(後輩には)より面白くなってくれるように言いたいことは言う」(※YouTube「粗品 Official Channel」より)と、宣言し、言いたいことを代弁してくれて、ガス抜きをしてくれた粗品さんのおかげでもあるでしょう。
普段なら途中でチャンネルを変えたくなるようなネタでも、粗品さんがどう評価するのか……そんなワクワク感もスパイスになり、ネタをちゃんと最後まで見ようという気にもさせてくれました。
「粗品が思っていたこと言ってくれた」「単純なつまらないではなく、つまらない理由まで説明してくれた」「粗品が言ってくれてスッキリ!」など、その言語化能力を評価する声がSNSに溢れていました。
審査は審査員の“芯”が試されます。M-1の立川志らく氏はランジャタイなど奇想天外なネタが好きなことで審査員としての評価を高め、上沼恵美子氏は意味不明なものや自分と合わないものについては、私情も交えつつもキッパリと評価を下していました。

画像:株式会社パルコ プレスリリースより
『しくじり先生』(テレビ朝日系/ABEMA)内で開催されるコント大会「キングオブう大」では、審査員長のかもめんたる・岩崎う大氏の細かく的確なアドバイスが芸人さんからも人気を博しています。
『THE W』では審査員として“芯”を見せつけた粗品さん。これからも多くの賞レースに審査員として参加し、マンネリ気味な賞レースをかき回して欲しいです。
<文/小政りょう>
小政りょう
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦