そんなある日、義母と町内会の懇親会に出席した時のことです。
「町内会の雑談の中で、義母がいつものクセで調子に乗り始めたんですよ。『うちの嫁ね〜、帝王切開だったのよ。ほら、寝ているだけの楽なやつ。パッと出されるだけだから、お母さんが誰でも同じよねぇ〜』とベラベラ大声で言い出して」
真由子さんはギュッと唇を噛み「またか」と思った瞬間……。助け船を出してきたのは、近くの席にいた2児の母・木村さん(仮名)。朗らかで気さくな“町内のお姉さん”のような存在です。
「木村さんが穏やかな笑顔のまま、スッと義母のほうに向き直り、『お義母さん、私も帝王切開でした。楽どころか、死ぬかと思うほど痛かったですよ。術後は笑うだけで激痛だし、くしゃみなんて地獄。寝ているだけで終わるなんて、経験した人の前で言う言葉じゃありませんよ』と言ってくれたんですよね」

義母は驚いた表情のまま固まってしまったそう。
「木村さんが『帝王切開を誰でも同じなんて言う人は出産を知らなすぎるし、なにより自分の周りの人を平気で傷つけていますよ。そんな失礼なことを言うのは止めた方がいいです』と続けると、周囲の人たちが静かになり、義母に注目が集まりました。義母の顔はみるみる赤くなり、耐えきれなくなったのか立ち上がって足早に帰って行ったんですよ」
真由子さんは胸がスッとして気持ちが軽くなり、木村さんにお礼を言いました。
「帰ると義母は『何なのあの女! 私に恥をかかせて!』とブチ切れていました。でもこの出来事は私にとって、救いになりました」
帝王切開であろうと経腟分娩であろうと、どの出産にも痛みと恐怖、そして母の覚悟が伴います。どの方法で生まれた命も、同じだけ尊く、同じだけ愛されるべきものです。そして、出産にまつわる偏見や無理解な言葉からお母さんたちを守るのは、周囲の大人たちの責任でもあります。
木村さんのように「間違っていることは間違っている」と穏やかに伝えられる人がいるだけで、救われる母親はきっと増えるのではないでしょうか?
出産方法に優劣はありません。どんな形であれ、母は命をかけて子どもを迎えます。だからこそ、お母さんたちが安心して「頑張った」と胸を張れる社会であってほしい……このエピソードは、そんな願いをそっと私たちに投げかけています。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
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