絶対に謝ろうとしない凛ちゃんの態度が、どうしても気になった明日香さん。義父が帰った後で娘と2人きりでゆっくり話をする時間を取りました。すると凛ちゃんは、ぽつりぽつりと胸の内を打ち明け始めたのです。

「義父が来るたびに私が苦しそうな顔をしていることや、娘自身も義父に何度もチューをされそうになり、嫌だと泣いてしまったことなどを、4歳の言葉で話してくれたんですよ」
血縁関係があっても、子どもが嫌がるキスを無理にしようとする行為は決して許されるものではありません。口と口の接触は虫歯菌がうつるリスクもありますが、それ以前に、本人の意思を無視したスキンシップは立派な虐待にあたります。凛ちゃんはまだ4歳ながらも「これは嫌なことだ」と必死に感じ取り、恐怖を抱えていたのです。
さらに凛ちゃんには「ママを守りたい」という気持ちが働き、ママが辛そうにしている原因はじいじに違いないので、これ以上近づけないようにするためわざと鍵を閉めた……。それが、幼いなりに考え抜いた結果のようでした。
「本当に可哀想なことをしてしまったと後悔しましたね。私の知らないところで娘まで嫌な思いをしていて、さらに母親を守ろうとして義父を閉め出して退治しようとしたなんて……。もう絶対に、凛に義父を会わせたくないと思いました」
義父を閉め出すという行動自体は危険でしたが、そこまで思い詰めなければならなかった凛ちゃんの心情を思うと、明日香さんは自分を責めずにはいられませんでした。
「本来、こんなに小さな子どもが守る側になる必要などないはずで、大人が守ってあげなければならなかった……その事実が胸に重くのしかかりました」

「その日の夜、私はこれまで胸に溜め込んできた義父の言動や凛の告白を、すべて夫に打ち明けました。最初は信じられない様子だった夫も、娘の『ママを守りたかった』という思いを聞いた瞬間に顔色を変え、『もっと早く気づくべきだった』と悔やんでいました」
そうして夫は、家族を守るための決断を下しました。
「義父の生活圏から離れ、凛を二度と同じ恐怖にさらさないために、引っ越すことにしたんです。義父は『勝手に俺を悪者にしやがって』と怒っていましたが、もう知りません」と微笑む明日香さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
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