筆者も正直言えば、当初は意味がわからずこのドラマを観ていたところがありました。
しかし、話が進むにつれ、ゆっくりとではありますが主人公・文菜や登場人物のキャラが自分の中に浸透してきたことで、恋愛経験の回想を通して主人公の思想や痛みを味わうドラマーーいにしえの『源氏物語』的な作品と捉えながら鑑賞できるようになりました。
一見恋多きモテ女のように見られますが、構成を分析すると1話は現在進行形の恋の始まり、2話は主人公周辺の恋愛事情、3話は高校生時代の恋、4話は大学4年時の恋、5話は大学3年時の同級生との恋、6話は2年前の恋、7話は浮気相手との話……と、それぞれの恋愛が語られています。その中には片思いや恋愛未満のものもあり、恋愛をある程度している男女なら経験しうる範囲ではないでしょうか。
実際に、内閣府が実施した「令和3年度 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査」では、既婚者の「結婚までの恋人の人数」において、20~39歳の女性は6人以上と回答した人が最も多く、16.1%となっていました。
ただ、40代の筆者が物語に没頭できたのは、現代の20代若者のリアルがそこにないからなのかもしれません。LINEなどのSNSを通じた通信手段は最低限で、女性が当然のようにタバコを吸い、洗練された高そうな飲食店でデートをし、サラリーマン的な職業の登場人物はほぼいない……。
職業が小説家という浮世離れした設定だからかもしれませんが、だとしても主人公やその周辺の人々のライフスタイルは、現代のリアルとはかけ離れています。ただ、30代後半から40~50代が青年期を過ごしていた90年代から00年代には、そんな空気感がありました。

「冬のなんかさ、春のなんかね」オリジナル・サウンドトラック(バップ)
20代の頃は自身も女友達もタバコも吸っていましたし、氷河期だったので有名大卒でも夢追いフリーターが周りにかなりいて、クラブやカフェ巡りをしたり、厳しい時代だった一方、美しい時間でした。
このドラマは現代設定なのに、そんな懐かしい描写が多いのです。事実、脚本の今泉力哉氏は45歳。今の若者にかつての若者のライフスタイルや内面をインストールしているようにも見えます。