「楽しくやってるだけだろ」ひるまない酔っ払いに……
突然声をかけられたおじさん達は一瞬きょとんとしたあと、片方が「え〜? 別にいいじゃんねぇ? このぐらいよぉ」とヘラヘラしながら言ったそう。
「もう1人も缶ビールを掲げながら『そうそう! 楽しくやってるだけだろ』と笑っていて。まるで応えていない様子でしたね」

すると女性は、ゆっくりとサングラスを外しました。その鋭くまっすぐな視線で、2人を見据えながら「楽しいのはあんた達だけでしょ」と低い声で言い放ちます。
「女性が腕を組んで『歌うわ、ぶつかるわ、酒こぼしそうだわ。さっきから迷惑なんだよ』と詰め寄ると、さすがにおじさん達はさっきまでの勢いを失い、少し気まずそうな顔になっていました」
さらに女性は一歩踏み込み、逃げ道を塞ぐようにして「
それとも何? 次の駅で駅員に突き出さないと分からないタイプ?」とおじさん達にグイッと近づいていったそう。
するとさっきまでの威勢はどこへやら、おじさん達はみるみるうちに小さくなっていきます。
「『ちょっと飲み過ぎました。すみません……』と急にペコペコしだして(笑)。ついさっきまでの騒ぎぶりが嘘のようでしたね」
すると女性は、ふっと表情を緩め「ほら、そこ空いてるから静かに座りな」と、先ほどまで誰も近寄らなかった自分の隣の席を指差しました。
「おじさん達は小さくうなずき、まるで叱られた子どものように大人しく座って……このお姉さん本当にすごいなと心の中で拍手しましたね」
いつの間にか車内はすっかり静けさを取り戻し、ホッとした空気で満たされたそう。
「最初は見た目だけで勝手に“怖そう”と決めつけてしまいましたが、蓋を開けてみれば、正義感あふれるかっこいい女性だったんですよね。もうそんな先入観で人を見るのはやめようと強く思いました」と微笑む美里さんなのでした。
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<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop