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「もう結婚できない」と言われたアラフィフみかん農家に、14歳下の女性教師が“13年のキャリア”を捨てて嫁いだワケ

SNSで顔を出すことに嫌悪感があった

――奥さんが農園の仕事を手伝ってくれて、政紀さんは助かっていますか? 政紀:そうですね。 甫美:だけど、私は家で仕事をすることも多いです。 ――そうなんですか? 甫美:Instagramの動画作成で時間がかかっているので。でも、私が来たことで個人販売が始められた感じ?
赤松果樹園のSNS担当に就任

赤松果樹園のSNS担当に就任

政紀:はい。昔と違って今は生で食べるミカンの栽培にとどまらず、ジュースやゼリーをつくる六次化産業に取り組むことが大事です。でも、一人のときはその作業がどうしてもできませんでした。  なので、ジュースやゼリーなど加工品づくりを手伝ってくれたらうれしいということは、お付き合いしている頃から伝えていました。 ――奥様との結婚で、やりたくてもできなかったことがやれるようになったと。「まふ夫婦」として発信されているSNS投稿も、結婚を契機に始められた活動だと思います。SNSでの発信を始めるようになったきっかけは? 甫美:夫のミカンを初めて食べたとき、おいしくてめちゃくちゃ感動したんですね。でも、スーパーに並んだ果物を買ってくれるお客様はこういう人間がつくったというのは知らないじゃないですか?「こんな人がこんな農園でこういう思いを持って」というのを知らず、ただの「愛媛産ミカン」と認識されて食べられるのは単純にもったいないなと思って。  まあ、夫はこんな感じで不器用やし、しゃべるのもめちゃくちゃ苦手やし(笑)。カメラ前でしゃべるなんてとんでもないとはわかっていたんですけど、彼のキャラはおもしろいし「こういう人がつくってますよ」とわかったうえでミカンを食べてほしかった。その一番の近道はSNSかなと思い、「Instagramをやりたいんだけど」って夫に相談しました。 ――実際、ご夫婦の人となりがわかるような動画が投稿には多いです。それは意識されているのでしょうか? 甫美:そうです。「どんな人がどこでどんな思いでつくってる」と伝えるのが私のテーマなので、それがわかるように。ただ、意識しなくても彼はキャラがだだ漏れるんで(笑)。フォロワーさんはあったかい人ばかりで、夫が登場する動画を保護者のように見てくださっています。 政紀:私の50年の人生のなかで今までにもらったことのないようなコメントばかりでして。最初、SNSに顔を出すということに実はめちゃくちゃ嫌悪感があったんです。 ――わかります、躊躇しますよね。 政紀:言葉が上手ではない私なので、速攻で悪口をいただくんじゃなかろうかと不安ばかりだったんですけども、顔を何度か出していくと「もういいや、どうにでもなれ」となってきて。
みかん農園

顔出しを渋っていたが、今ではもうこんな素敵な笑顔

甫美:いや、でもフォロワーさんたちは本当にあったかいから安心して。 政紀:もう50歳になってこの性格やしゃべり方が変わるわけはありませんので、ドギマギしながらの映像しかお届けできんのやけども。でも、そういったなかで「人柄が出て素敵ですよ」と温かいコメントをいただいたりすると「え、こんな私なんかでいいんか?」みたいな感じでですね。 甫美:自己肯定感が上がってるんだよね(笑)。 政紀:本当に今までなかったような私の心の動きなんですけど。作業の休憩時間にInstagramのコメントを見る機会が増えて、書き込まれた温かいお言葉を見るのがすごく励みになっています。真夏で暑かったりすると心身共にやる気も失せるような状態になるのですが、「投稿を見て喜んでくれている人がいるんだ。さあ、もうひと頑張りしておいしいミカンをつくるぞ」と心の底から思うようになりまして。そういうコメントをずっと読ませてもらっています。 ――うれしいメッセージは何度も読みたくなりますよね。 政紀:そうです。「ああ、心に入ってくる」というコメントがあると3回ぐらい読み直したり、なんなら、次の日ももう1回読むみたいな。 甫美:ハハハ! ――甫美さんはご主人の愛されキャラを見抜き、SNS発信を進めたところもあるのでしょうか? 甫美:ですね。不器用で、真面目な。私からしたら「おい、ちょっとつまらんぞ」と思うときもあるんですけどね。 ――ハハハハハ! 甫美:タイプが本当に全然違うんです。「もっと、シャンシャン喋らんか!」と思うときもあるんですけど、まあそれが夫らしさだなと思って。私もそういう部分を信頼して結婚したっていうのもあるので、そこもアピールしたいなっていうのはあります。

心にぽっかり穴が空いた妻を見てSNSを共にがんばろうと決意

――動画で拝見したのですが、教員をやめる際のいきさつに心残りがある甫美さんに気づいた政紀さんが、「SNSの発信を一緒にがんばろう」と声をかけたそうですね。子どもたちにさよならを言えず、心にぽっかり穴が空いてる甫美さんを見て心配の気持ちが大きくなったのでしょうか? 政紀:それはおおいにありました。 甫美:SNSをやることで私がまた生きがいというかやりがいを見つけれるんじゃないか、って言っとったよね? 「じゃあ、顔出しは嫌だけどやろうかな」って(笑)。それで元気になってくれれば……というのはあったんだよね。
みかん農園

心にぽっかり穴が空いた甫美さんを見てSNS始動を決心

――実際、SNSの発信を始めたことにより甫美さんは前向きな気持ちになれましたか? 甫美:そうですね。編集の仕方であったり、新しいことをいろいろ勉強するじゃないですか? 昔から新たなことを学んでいると、すごくワクワクするタイプなんです。だから、元気になったし、良かったよね(笑)?  最初はフォロワーさんが増えていくのがうれしいという思いが大きかったですけど、今はいろんな人に見てもらえることが楽しい。「投稿、がんばってください」「次の投稿、楽しみにしてます」って、めちゃくちゃDMをいただくんですよ。  私、人が好きなんです。教員も人とずっと関われるじゃないですか? でも、こっちに来て友だちは1人もいないし、夫としかしゃべらないし。まあ、夫はこんな感じなんで話が合わないときもあるんですけど(笑)。 ――ハハハハ! 甫美:だから、私としても新たに人と出会えてそれがすごいモチベーションになっています。
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慣れない農園の仕事を手伝っていたら骨折
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