火野正平はなぜ66歳でも色っぽいの?“恋は送信より受信”が信条
今年で放送開始から6年目を迎える、『にっぽん縦断 こころ旅』。俳優の火野正平が、視聴者から寄せられた手紙をもとに、全国各地を自転車で旅する人気番組。待望の新シリーズが3月28日からスタートします。
そんな道中のスパイスになっているのが、ふとした仕草や言葉から垣間見える、火野正平の人間臭さ。車道を横切る毛虫を見つけて、渡るまで自転車を止めて待つこともありました。持病を抱える女の子と二人きりで会話をしたときには、マイクを切り、親身になっておしゃべり。それがベタベタとした優しさにならないところが、素敵なのですね。
そうしたシーンの数々に、他の旅番組にはない後を引く味わいがある。有名人やタレントといった肩書に頼らない、66歳の男性が映っている。『こころ旅』の静かな人気は、そんなところにあるのかもしれません。やはり興味をそそられる人物なのでしょう。
というわけで、このたび『火野正平 若くなるには、時間がかかる』が発売されました。仕事や恋愛、生い立ちなどについて、リラックスした様子で語っているのですが、時折ボソっと大事なことを教えてくれる。ここからは、トピックに分けてそんな言葉のいくつかをご紹介したいと思います。
正平といえば、やはり「昭和の色男」。数々の女優と浮き名を流してきた過去から、野獣のようにメスを追いかけていく姿を想像してしまいますが、どうもそうではないようなのです。
<俺はもともと向こうから電波を発信されてから、アンテナで捉えて受けに行くタイプなんだよ。(中略)多分この子は俺に何かあって、今こういう行動に出てるんだなってことをちゃんとわかってやらないと。>
これは女性も参考になる心の持ち方なのでは? 気持ちが高まるとついつい一方通行になりがちですが、相手の様子を観察してからアクションを起こした方が確率は良いはず。
尊敬する斎藤光正監督から「全シーンがワンシーンで、一つのシーンだと思え」と言われたといいます。そのこころは?
<大切なのは、大局で見ろ、その場その場で見るなっていうことさ。(中略)「広い宇宙から見てみい」とね。今生きている瞬間なんて、もう見えないもんな。>
『こころ旅』では、30代そこそこでこれからの人生に思い悩む視聴者からの手紙が紹介されることがありました。読み終えると、「俺もいつか通ってきた道だ」といった表情を浮かべつつ、この教えを思い出しているかのように、手紙の送り主に語りかける正平が印象的でした。
それにしても、大してイケメンでもない男が、なぜあんなにモテるのか。そんな疑問に答える名言が、こちら。
<「男」っていうと、なんか臭そうだもんな。(中略)
男って責任感や背負うものが強いのかな。だから俺は高倉健さん的にしてもジョン・ウェイン的にしてもさ、「男らしく」にはなりたくねえもん。(中略)
もっとじいちゃんになっても、男の子っぽくいたいよね。男って臭いよ、やっぱり。>
勘違いしている男がいたら、そのまま言ってやりたいと思う女性もいるかもしれませんね。
もしかしたら忘れている人もいるかもしれませんが、念のため、火野正平は俳優です。名脇役の呼び声高い彼は、この職業をどう考えているのでしょうか。
<俺達の仕事って観てもらって初めてお金になるし認められるものだから、「こんな良いものですよ」とも言いたくはないし、「こんな悪いものですよ」とも言いたくない。単に「俺はこれですよ」と。(中略)
多分無理しても駄目だと思うな。無理すると底が見えると思うしさ。(中略)
気張って芝居したらイカン。すぐ人は飽きよる。>
<羨ましいな、いいなこの人、って思われなきゃ役者は駄目だと思うよね。あいつかわいそうだなって思われてたら駄目だと思うし。だから役者って芝居じゃないんだな。芝居を観て「いいな」じゃなくてその役者を見て「いいな」って思う。(中略)
演技の向こうに見える「ああいいな、この男。いい男だなあ」っていうさ。>
一見すると肩の力が抜けた言葉に思えますが、裏を返せば、他人からあわれみを持たれないように振る舞うことは、人間の義務であると言っているようにも感じます。
肩肘張ったところのない本書ですが、何かモヤモヤしていた悩み事のヒントになりそうなきっかけを与えてくれそうな一冊です。
<TEXT/比嘉静六>
火野正平の自伝が人気らしい

1)恋は“送信”より“受信”
2)小さなことにこだわるな
3)男になりたくない
4)役者とはかくあるべし
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