ドラマ内で方言を話すのは小橋常子の家族ではなく、その周囲の登場人物が多い。ただ、浜松人の私が一度も耳にしたことがない方言を役者が話している。
第4話で遠州浜松染工の社員が話す「取引が決まったっちゅうのに、小橋さんが居てくれたらのう」。
「~ちゅうのに」も「~のう」という表現も、私の知る遠州弁にはない。第11話では玉置三兄弟の次男が「運動会でオラたちに勝ったからってよう、いい気になってるんじゃねえでぇ!」と怒鳴るのが、
語尾の「でぇ」も同じく聞いたことがない。あと、唯一と言っていいほど常子が使う
「どうしたもんじゃろのう」も。
ひと昔前は使っていたのだろうか? とも思ったのだが大正生まれのバリバリ遠州人の祖父さえも使っていなかった。それとも朝ドラ前作の『あさが来た』で使われていた「びっくりぽん」のようにするための造語なのだろうか。ストーリーに田舎の雰囲気を演出したいのだと思うが、遠州弁は割と繊細なので、できれば正しい使い方をお願いしたい。
ドラマ内で最もよく使われている2ワード。まずはこの正しい使用法を……。
例1「おっかさのとこ行っただけぇ?」(訳)「お母さんのところに行ったの?」
例2「好きだに」(訳)「好きだよ」
「~けぇ?」は疑問系や驚いたときに、「~だにぃ」は肯定系に使用することが多い。
ともに末尾の音をちょっと上げるのがポイントだ。ところがドラマ内ではやたら末尾につくだけで意味が分かりづらくなっている。第8話では消防団が「どかんけー!!」と怒鳴っていたが、
あれじゃ浜松人にとっては、英語圏の人にとっての聞きづらい英語に近い。普通に「どけー!」で良かったような……。
第8話では小学生が「そうだに! 何やってんだに!」とヤジを飛ばしていたけど遠州弁なら「そうだに! なにやってるだよ~」が正解。
細かすぎるツッコミで恐縮なのだけど、それだけ愛と期待を持って、地元民が注目しているドラマなのでぜひNHK様、ぜひ方言指導の見直しを!
<TEXT/スナイパー小林>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
【スナイパー小林 プロフィール】
ドラマ解説、芸能、恋愛、カルチャー、美容・健康ネタ好きのライターであり、編集者であり。執筆や編集を手がけた媒体は100冊以上。TBS系「毎度お騒がせします」からドラマをこよなく愛し、ついには趣味が仕事になった幸せ者のアラフォー。
スナイパー小林
ドラマ解説、芸能、恋愛、カルチャー、美容・健康ネタ好きのライターであり、編集者であり。執筆や編集を手がけた媒体は100冊以上。約20年以上ドラマをこよなく愛し、ついには趣味が仕事になった幸せ者のアラフォー。
Twitter:@hisano_k