整形で顔面崩壊する人とは?高須克弥院長が明かす「失敗パターン5つ」
芸能人から一般のOLまで身近になった「美容整形」。一方で、「整形で顔面崩壊」などの黒伝説も、まことしやかに語られます。
美容整形の失敗にはどんなパターンが多いの? やりすぎるとダメ? 美容外科のパイオニア、高須クリニックの高須克弥院長に聞いてみました。教えて、かっちゃん!
――よく言われる「整形しすぎて顔面が崩壊した」は本当に起こりうることですか。
高須「そりゃ、へたくそな医者がやれば、“顔面崩壊”だってありうるよ。絵描きでもさ、サッと美しい絵を描ける人もいれば、絵具を塗り重ねて汚くしちゃう人もいるでしょう。それと同じですよ。
あとね、美人にする手術は一発勝負なの。何度もいじくりまわすのはよくない。でも、若くする手術は何度もやる必要があるよ。だって、手術したその日からまた年をとっていくわけだから、若いままキープするには、定期的に手術が必要でしょ」
――同じ美容整形でも「美人にする手術」と「若くするための手術」では全然違うんですね。
高須「そうだよ。僕は正直いって“美人にする手術”はあまり興味がないし、やりたくないんだよ。時代によって流行が変わっていくし、ヘンなのが流行るしさ。『アヒル口』だの、『デカ目』だのって全然いいと思わないもん。
その点、“若くする手術”はいいですよ。誰にとっても、理想形は一緒。トレンドに左右される心配もないし、施術するほうは気楽ですよ。最悪でも“今の顔”をキープできれば、成功なんだから」
――「美人にする手術」を何度も繰り返すのはマズい?
高須「うん。かなりマズいね。そもそも、美人というのは『バランスが整っている顔』を指すんです。美人と不美人の差って、ほとんどなくて、要はバランスの問題だけ。
例えば、目が大きく、同じように鼻や口も大きければ、バランスがとれているから美人に見える。でも、目が大きいのに、鼻が低く、おちょぼ口だとバランスがとれない。日本人形とフランス人形はそれぞれ良さがあるけど、日本人形の顔に、フランス人形の鼻をつけるのはよろしくない。
バランスを整えるには、全部一度にやったほうがいい。ちょっとずつ、何度もいじったら、その都度、バランスが狂っちゃうじゃない」
――「若くする手術」でいうと、「(しわ取りのために)肌を引っ張りあげても、いずれ糸がほどけてくるのでは?」と心配する声もありますが……。
高須「あれは糸がほどけるんじゃなくて、顔がたるんでくるの。あと、フェイスリフトの失敗例でいうと、全部一緒に引っ張ればいいのに、片側ずつ手術して『失敗した!』と言ってる人はいるよ」
――片側ずつ手術すると、バランスがとりづらくなるんですか?
「片方やった後にね、『先生、引っ張りすぎです。反対側をやるときに、少しゆるめてください』と言うから、リクエストされた通りにやったら、あとから『もっと力いっぱい引っ張ってもらえばよかった!』って言いだすの。
もちろん、何年か分は若くなってて、満足もしてるんだよ。でも、永久に若いままじゃないでしょ。だから、たいてい『次回はもっと、ギンギンに引っ張ってください』と言い出すの。で、僕もやっぱりな~と思いながら、カルテに『次はギンギンに!』ってメモするわけ」
――人気がある「まぶたの二重手術」はどうですか?
高須「『昔に比べて目が小さくなってきた……』という人は二重手術をしちゃダメだよ。そういう人はね、加齢やハードコンタクトを長年使ってることでまぶたが下がってくる、『眼瞼下垂(がんけんかすい)』という状態なの。
そういう人が二重手術をしても、二重の幅が広くなるだけで、ちっとも目は大きくなりませんよ。歳をとって小さくなった目を治すには、たれさがってる上まぶたを縫い縮めたり、必要に応じて進行中の老人性の眼瞼下垂を治す必要がある」
――素人判断でリクエストすると大変なことになりますね……。
高須「マトモな医者であれば、いくら患者がリクエストしても断るよ。でも、安さをウリにしてたり、オープンしたばかりの美容整形外科クリニックの中には患者さんの言いなりになっちゃうところもある。目先の商売のことしか考えてないんだね。
『鼻を高くしたいから、たくさんヒアルロン注射を打ってください』と言われたら、『わかりました』とバンバン打つ。そりゃ、クリニックは注射1本より、10本打つほうが儲かりますよ。でも、そもそも、ヒアルロン酸注射はちょっと鼻を高くする程度の“プチ整形”なのに、大量に注入したら、映画『アバター』みたいに太い鼻になっちゃいますよ。
ヒアルロン酸注射が流行った頃、きっとそういう医者がたくさん出るだろうなと思ったから、僕は、打ちすぎたヒアルロン酸を溶解するための注射を大量に仕入れておいたの」
高須「“自分の言うことを聞いてくれるのがいい医者”と思い込んで、とんでもない顔になってしまった人たちが泣きながら、次々にやってきましたよ。『再手術を希望します!』『訴えてやりたい』って。
でも、手術なんていらないの。『お金はその失敗した医者からもらっておいで』といって、溶解注射を打ってあげたら、30分で元に戻るんだもん。おかげでずいぶん感謝されたし、儲かりました」
――シロウトのオーダーどおりにやる医者はその時点でアブないということですね……。
高須「そうそう。患者さん自ら美容整形手術の陣頭指揮をとっていいことは何もありません。一流ブティックに、自分で起こした型紙を持ち込んで『この通りに作って!』と強要してるようなもの。天下のシャネルだって、『全力は尽くしますけど、奥様のデザインですか……』って絶句するでしょう」
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「二重にしたい」「鼻を高くしたい」などの要望を伝えることは大切。でも、どうやってその願いをかなえるかを考えるのは、プロである美容整形外科医の仕事。“なんでも君の言う通りにするよ”を安易に口にする輩が信用できないのは、美容整形の世界も同じようです。
【高須克弥氏・プロフィール】
1945年生まれ、医学博士。高須クリニック院長で美容外科の第一人者。最新の美容技術を、自ら試して普及することでも有名。著書多数、近著は『高須帝国の逆襲』(Kindle版)、『行ったり来たり僕の札束』
<TEXT/島影真奈美>
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整形で顔面崩壊は「ありえます」
失敗例1)「美人にする手術」を何度もやる
失敗例2)フェイスリフトを片側ずつやる
失敗例3)「眼瞼下垂」なのに二重手術をする
失敗例4)ヒアルロン酸を打ちすぎて鼻が太くなる
失敗例5)医者が、患者の言うことを聞きすぎる
高須克弥
【プロフィール】
1945年生まれ、医学博士。高須クリニック院長で美容外科の第一人者。最新の美容技術を、自ら試して普及することでも有名。近著は『ダーリンは71歳 高須帝国より愛をこめて』、『炎上上等』、続編で最新刊の『大炎上』など