●連載「ファッション誌が答えてくれない相談」43 by小林直子●
秋色って、具体的に言うとどんな色でしょうか? また、秋にふさわしい素材とか、あるのでしょうか?
季節の先取りはおしゃれに見えますから、いつも少し先の季節を意識した装いのほうがよいのです。
そのときの「季節」とは、
気温ではなく、太陽の光の加減です。どんなに気温が高くても、夏至で天頂近くにあった太陽は、冬至で地平線へ向かって傾いていきます。
これは、頭のてっぺん近くから当たっていた太陽光という明るい照明が、斜め上から当たる光になることを意味し、その結果、光の強さと光によってできる影が変化します。それに伴い、人は真夏の太陽光下で魅力的に思えた色と、また違った色に魅力を感じるようになるのです。

春分と秋分の太陽は、夏至と冬至のちょうど中間に位置しますから、秋らしい光が見られるのは秋分のころです。どんなに気温が高くても、秋分に向かって季節は秋へと動いていきます。
そのときに人の目に魅力的に映る秋の色とはどういう色でしょうか。一番わかりやすいのは自然界に存在する秋の色です。秋の果物が実り、青かった葉は少し黄色に変化します。それが秋のスペクトル(分光分布)です。

画像:WEAR
具体的には、マスタードイエローから明るい茶色、クリムゾンやボルドーからダークな茶色、ベージュ寄りのカーキから暗いフォレストグリーンなどです。秋の森や、木になる実をイメージしたり、ブドウやイチジクなどの秋の果物、栗やキノコなど秋の食べものをイメージすればわかりやすいと思います。

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一方、秋に合う素材とは何か?
秋は基本的にコットン、シルク、ウール、化学繊維など、どの繊維でもOKです。麻はいつまで着られますかという質問をよくいただきますが、例えばウールリネンやビスコースリネンは秋でも問題ないと思います。
では素材の織りはどうでしょうか。秋で真っ先に思い浮かぶのはコーデュロイです。コーデュロイはコットンで作られているものがほとんどですので、見た目とは裏腹に、暖かくはありません。ただ、厚いものはそれなりに保温性があるので、気温が高い秋には薄いコーデュロイがふさわしいでしょう。

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そのほか特にこれは秋の素材と言われているものはないのですが、私が秋の光にふさわしいと感じる素材は
毛足のあるもの、そして
光る素材です。
スエードやベルベット、べロアは毛足があるので、光が当たると長い繊維の部分に陰ができ、陰影が生まれます。光が斜めから差せば差すほど陰影が深くなりますから、これら毛足のある素材はこれからの秋のシーズンにぴったりだと思います。