その夜、夫に聞いたところ、これまで知らなかった夫の家族の顔が見えてたのです。それは――。

「義母は夫が小学生のころから、毎日焼酎やウィスキーを一本開けるほどの酒豪で、それが災いして肝炎を患い、足がむくみすぎて歩けなくなったこともあるそうです。
血圧を下げる降圧剤も常用し、内臓がボロボロの義母にとって、生きがいは家族を従(したが)えること。義父に小遣いを与えて海外で遊ばせるというのも、義母特有の優越感を満たす術だというのです。うちの家族とはまったく違うので、びっくりしました」
井川さんの家族はサラリーマンの父親に専業主婦の母、温厚な兄で現在メーカー勤務という
典型的なサラリーマン一家です。自分が育った環境とあまりにもかけ離れた夫の家族に、ざわざわした不快感を持ってしまったと話す井川さん。
「しかも夫の実家は、体が不自由の義母のせいか、いつも汚くて。31日の大掃除は義理のお姉さんが協力してくれないので、いつも嫁の私の仕事でした。2日にうちの実家に帰ると、体中がかゆくて。実家で寝込んでしまうことが続いたので、翌年から年末年始は夫の実家に1日2日に滞在するようになりました」

それから2年後の30歳で夫と離婚。インテリアデザイナーの井川さんと外食産業で働く夫とのすれ違い夫婦生活にピリオドを打ったそうですが、義父の海外買春エピソードも、離婚の原因の一つだったと井川さん。
「いま付き合っている彼氏のうちは私と同じようなサラリーマン家族。価値観も似ているので、安心感がある。来年結婚します」
価値観の一致というのは、育った家庭環境から培(つちか)われることもありますね。結婚する前に相手の家族をしっかり観察して、家族ごと見極めることも大事かもしれません。
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クリスマス・年末年始の忘れたい記憶 vol.14―
<TEXT/夏目かをる イラスト/ただりえこ>