「
僕は妻のことも大好きなんですよね」
臆面もなくリョウスケさんはそう言う。19歳のころからつきあってすでに30年近いのだが、妻は「特別な女性」なのだそう。
「ふたりでがんばって働いて3人の子を育てて。そうなると妻とは同志みたいなものと言う男は多いと思うんですが、僕にとっては永遠に女性です。今も週末はふたりでブランチに行ったりする。子どもたちは『ヘンな夫婦だよね』ってドン引きしてます(笑)」
その一方で、トモコさんに対しても恋愛感情が止まらない。トモコさんと出会う前の時間が長すぎるので、「知り合うには時間がかかる」。そのため知っていく過程が楽しくてたまらないのだという。
「夫婦にしろ恋人にしろ、人をひとり理解するのは一生かかっても無理だと思うんです。人は日々変わるしね。だから妻への興味も尽きないし、47歳で知り合ったトモコさんにいたっては彼女の47年間を知るのにどれくらい時間がかかるのだろうと思う。でもそうやって知っていくのが恋愛の醍醐味じゃないかと思うんです」
話を聞いていると、軽くておもしろいだけの男性だけではないのだ。妙にまじめなところがある。これまでの恋と、トモコさんの違うところはと問うと、彼は真剣に考え込んだ。
「彼女、意外とものごとを斜めから裏から見るタイプなんですよね。そこがおもしろい。僕も妻もわりと単純な性格だから、トモコさんの裏読みは好きですね。もちろん性的にも合うし。あ、妻とももちろん合うんですけど、トモコさんは長年レスだったらしいので、一からふたりで行為を作り上げていくのが楽しい」
仕事に恋に妻とのデートにと日々忙しいリョウスケさんだが、最近、夜中にふっとひとりで考えてしまうことがあるという。
「最終的にどうなるのか、どうしたらいいのか。
妻とは別れない、でもトモコさんとも別れたくない。世間では許されないことだし、妻が知ったら離婚を突きつけられるかもしれない。ときどき、そら恐ろしい気分になるんです」
そうは言っても、これからトモコさんに会うと言って去っていった彼の背中は、やはりどこか恋する楽しさに満ちているように見えた。
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恋する「不倫男」の胸のうち Vol.2――
<取材・文/亀山早苗>
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【亀山早苗】
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『
復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数