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『あな家』不倫バトル終結。「結婚したら安心」という考えが危ない理由

亀山早苗の不倫時評――『あなたには帰る家がある』の巻 vol.6>  不倫で交差する2組の夫婦を描いた話題のTBS金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』(金曜、夜10時)が、6月22日に最終回を迎えました。玉木宏&中谷美紀が演じる夫婦と、ユースケ・サンタマリア&木村多江が演じる夫婦、4人それぞれにとっての幸せとは?  不倫事情を長年取材し著書多数のライター・亀山早苗さんが読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)

密室に閉じ込められて…本音をぶつけ合う2組の夫婦

 ドラマ『あなたには帰る家がある』全11回が終了した。不倫から始まった二組の夫婦の物語は、落ち着くところへ落ち着いたと言えるだろう。夫に浮気された真弓(中谷美紀)と秀明(玉木宏)夫婦は離婚したままだが、どうやらこの先もつきあいは続きそう。いずれまた一緒になるのでは、と予測できる終わり方だ。一方、秀明と不倫した綾子(木村多江)と太郎(ユースケ・サンタマリア)は元の鞘に収まる。  不測の事態でエレベーターに閉じ込められた4人がそれぞれ自分の心情を吐露するところが興味深かった。夫婦というのは、なかなか本音をぶつけあう機会がないのではないだろうか。  綾子が秀明をストーカーまがいに追いかけ回したことについて、秀明と真弓がひとつずつ挙げ、「怖いでしょ、そんな人を好きになれないでしょ、ふつう」と責め立てる。そこで太郎が「綾子を責めるな」と一喝。「世間を知らない女が純粋に人を好きになった。それだけの話だろ。なんでわかってやれないんだよ、なんで受け止めてやれないんだよ」と擁護する。  家事が苦手な真弓と小心者でビビリの秀明、家事育児万能だが世間知らずの綾子とちょっと強引だが過去のある妻を幸せにしてやりたい一心だった太郎。この二組の夫婦、夫の意識という点でドラスティックな変化があったのは後者の夫婦だ。それは従来の夫婦関係からの脱却だからわかりやすい。  だが、一見、言いたいことを言い合って息が合うように見えながら実は微妙に歯車が噛み合っていないことを夫の不倫から知り、自分の生き方を再度見つめ直す真弓こそが、今の時代の女性の生き方を反映しているように思える。

「相性」のひと言で語れない現代の夫婦像

 いつのころからか女性にとって、生き方のモデルケースがなくなった。結婚して専業主婦になって子どもを産み育て、なんだかんだ言っても最後は縁側でお茶を飲む老夫婦になって死んでいく。そんな生き方は今の50代にも通用しない。  生き方の幅や選択肢が広がった分、女性たちは戸惑い悩む。結婚はしたいが仕事を続けながらでは負担が大きすぎる、子どもはほしいが時間的にも経済的にも苦しくて2人目は無理など、社会体制が整っていない分、女性たちは常に「~したいができない」状態に陥っているのだ。子育てに積極的に関わるなど、男性たちの意識が少しずつ変わってきていることだけが救いかもしれない。  そうなると今度は夫婦関係が濃厚になってくる。かつての結婚は「生活のため」であり、奇しくも綾子がドラマの中で言うように「相手は誰でもよかった」側面がある。自分と子どもの生活を守ってくれる人であれば、女がすることは変わらなかったのだ。しかし、女がただ「守ってもらい、養ってもらう」生活だけでは生きていけなくなった分、「一緒に暮らしていく相性」が重要になってきた。そして今は、一緒に暮らせる相性だけではなく、「ともに歩んでいけるパートナーシップ」にシフトしつつある。
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夫婦間の「パートナーシップ」とは何なのか?
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