徳島名産“竹ちくわ”は生でも焼いても主役になれる美味しさ/カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」
【カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」Vol.25 徳島県小松島市「竹ちくわ」】
今回のテーマは「ちくわ」である。
決して珍しくも華やかな食べ物でもないが、もちろん西友とかで1本あたり13円で売られているちくわではない。しかしこう改めて見ると、貴様本当に魚肉か? と心配になる安さである。
どんな食べ物にも、それを名産としている土地があり、ちくわにも当然それがある。
徳島県小松島市の「竹ちくわ」である。
もともとちくわは「竹輪」と書くので「竹ちくわ」というのは「大事なことだから二回言っている」スタイルである。
しかし、実際「竹」こそが「竹ちくわ」最大の特徴と言って良い。その名の通り、ちくわに竹が刺さった形で売られているのだ。
同じちくわでも、竹に刺さっている、というだけで少なくとも「13円」には見えなくなる。それどころか「ただものではない」感さえ漂(ただよ)っている。
実際には高級ちくわ、というわけではなく、1本100円程度で特産品としてはリーズナブルな値段なのだが、「竹に刺さっている」というだけで一目置かれるので、土産物に最適だろう。
まず、なぜ徳島県小松島市が竹ちくわを名物としているか、というと、平安時代にまで遡(さかのぼ)る。屋島の戦いで、あの源義経が小松島に上陸した際、地元の漁夫たちが、魚のすり身を竹に巻き付け焼いて食べているのを見て、「なんそれ、ウマそう、マジ1本所望」と食べて絶賛したことから、このスタイルのちくわが小松島の名物になったという。
このような「庶民の食い物を偉い人が食って褒めたことから名物になる」という話は、竹ちくわ以外でも聞いたことがある。
そんなに出来た話が、そこかしこで起こるか、と思わなくもないが、おそらく偉い人が下々の食い物に興味を示すことは割とあったのだろう。しかし実際食ってみたら「クソ不味かった」か「まあこんなもんか」というケースの方が多く、そんな話はわざわざ後世に残らないので、「美味かった」話だけがレアケースとして各地で残っているのではないだろうか。
実際、とれたての魚のすり身を焼いて食う、というのは、ラブコメ漫画の料理下手ヒロインでも混ざってない限りは不味くなりようがない。さらに浜辺で竹に刺さっていて、焼きたてという最高のロケーションもある。
もちろん、今回は焼きたてではなく、我が家も浜辺に立っている小屋ではないが、竹に刺さっているというだけで十分美味そうに見える。
送られてきたのは、徳島県小松島市の「谷ちくわ商店」の竹ちくわだ。
この竹ちくわ、どう食べるのが良いかというと、一番推奨されているのは「生」である。
漫画に出てくる原始肉の如く、竹を持ってそのままかぶりつくのが本場の食べ方だ。
もしくは、逸話通り、焼いてから食べるのも良いとされている。その際同じく徳島名物の「すだち」をかけるとなお良し、らしい。

ちくわに竹が刺さった形だと「ただものではない」感が
「庶民の食い物を偉い人が食って褒めたことから名物になる」系
徳島県小松島市の「谷ちくわ商店」の竹ちくわ
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