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ウニとアワビの潮汁「いちご煮」の缶詰が美味しすぎた/カレー沢薫の「ひきこもりグルメ紀行」

食べやすく、ガツガツイケてしまった

 とにかく「悪いことは言わないから炊き込め」というアドバイスに従い炊き込みご飯にすることにした。  作り方は簡単。米を研ぎ吸水させたあと、いちご煮缶の中身を全部入れて炊くだけだ。  まず缶を開けた瞬間、強い磯の良い香りが漂(ただよ)う。  だが、粉末のマツタケの吸い物のように、香りだけで身は「食い終わったあとか?」という程度しかない。しかもそれすらマツタケではなくツイタケだという。このいちご煮はそんなことはなく、ウニもアワビもふんだんに入っている。
「味の加久の屋」いちご煮ドットコムより

「味の加久の屋」いちご煮ドットコムより http://www.ichigoni.com/sticking-to/how-to-eat.html

 炊きあがりが近づくにつれ、炊飯器からは確実においしそうな匂いがする。正直ウニやアワビより「カルビ」と言われた方がテンションが上がるタイプだが、炊き込みご飯にしたことにより「食べるのが俄然(がぜん)楽しみ」となった。  そして出来上がった炊き込みご飯は本当に美味しかった。香りがよく、米全体にウニの味が行きわたり、そして何より食べやすく、ガツガツイケてしまった。  いちご煮缶は他にもアレンジ料理があり、パスタに使っても美味しいようなので、もう一缶はそれで食べてみようかと思う。  まずはそのまま食べろよと思われるかもしれないが、何せウニとアワビという平素(へいそ)食べなれないものなので、食べなれた形にした方がおいしく感じられる気がする。やはり美味いものは美味く食ってこそだろう。

まさかの「食べ物を食べ物で例える」果実の野イチゴ由来の名前

「味の加久の屋」いちご煮ドットコムより

「味の加久の屋」いちご煮ドットコムより http://www.ichigoni.com/sticking-to/origin.html

 ちなみに何故「いちご煮」という名前かというと「赤みが強いウニの卵巣の塊が、野イチゴの果実のように見えることから」とのことだ。  まさかのあの「イチゴ」由来であった。  食べ物を食べ物で例えるというのは女優を紹介する時に「女優の○○さんに似てることでおなじみ」と例えるような下策(げさく)にも思えるが、星座と同じで「そう見えた」のだから仕方がない。  ちなみに青森には「せんべい汁」という名物汁がある。こちらは「何かがせんべいに、見えた」ということではなく、そのまんませんべいをいれた汁の事である。  もしかしたら、ウニとアワビという高級食材を使っているだけに、何かひねった名前にせねばと思った結果、まさかの「いちご」になったのかもしれない。 <文・イラスト/カレー沢薫>
カレー沢薫
かれーざわ・かおる 1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。主な漫画作品に、『ヤリへん』『やわらかい。課長 起田総司』、コラム集に『負ける技術』『ブスの本懐』『やらない理由』などがある
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