娘さんは友達に呼ばれ、すぐに立ち去りましたが思わぬピンチに見舞われたのは奈々枝さん。ママ友たちの手前、どうごまかして切り抜けるかを考えましたが、何も浮かびません。
「こ、これはね……と言葉に詰まっている私に『大丈夫! 私も似たような格好をしていたから』とママ友のひとりが声をかけてくれたんです。でも、仲間がいたんだと思ってホッとしたのもつかの間、『ただ、あそこまでスカート長くなかったかな』と一言。再び地獄に突き落とされた気分でした」

別のママ友は「大丈夫! 杉本さんは杉本さんよ!」とフォローしてくれたそうですが、傷口に塩を塗り込むかのように「で、タイマンとかよくやっていたの?」、「当時の彼氏もやっぱりヤンキーだったの?」などと質問攻めに。
まわりを見渡したら、一緒にいたママ友たちがみんなワクワクした表情で奈々枝さんを見ていたそうです。
「それからしばらくは会うたびに昔の話を聞かれ、本当に大変でした。けど、それ以上に許せなかったのは娘です。悪意がないのはわかっているけど、あの子があんなことを言わなきゃ元ヤンだとバレずに済んだのに!
だから、腹いせに文化祭の翌週、部活の練習試合に出かけた娘に持たせたお弁当にはひじきやピーマン、セロリなどあの子の嫌いな食べ物ばかりをおかずに詰めてやりました(笑)」
逆恨みのような気もしますが、我が子にこんな方法で仕返しするとはやっぱり元ヤン。素敵な奥様や母親を演じていても昔の血が騒ぐようです。
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ヤンキー・ギャル・コギャル列伝 vol.5―
<文/トシタカマサ イラスト/真船佳奈>