Vol.8「妻が、子供が欲しいと言いやがった」。“自立したおしゃれ夫婦”が泥沼離婚するまで
養育費は自分の存在証明
「養育費は僕の存在証明みたいなものです。娘が30歳とか40歳になった時、僕がもう死んでいたとしても、お父さんは無責任に支払いを放棄したりはしなかったと認めてほしいだけ。そういう、いやらしい意識です」
いやらしくはないんじゃないですか、と反射的に言うしかなかった。
「彼女が成人するまでのお金を残してあげられれば、それでいいですよ。僕が死ぬと生命保険が下りてあっちに毎月25万円振り込まれるから、今死んだほうがいいんじゃないかとも思うんですけどね(笑)。なんだったら出版業界だって、もう死んだも同然でしょ。野心的な本なんか作れないし、うちの会社はWEBの記事広告でもってるようなもの。紙が死んだ時点で、僕は死んだんです。今は過去の蓄積でしか仕事してませんから。いつ死んでもいい」
でもそれじゃあ娘さんが……と言いかけると、花田さんは遮って語気を荒げた。
「関係ないじゃん。僕、親のことなんか一切愛してないのにさ」
今まで自分の親のことなどまったく話題にあげていなかった花田さんが、唐突に「親」と口にした。
「僕が自分の親を愛してないのに、娘に僕のこと愛せなんて言えないもんね」
『キル・ビル』のビルの気持ちがよくわかる
稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。映画配給会社、出版社を経て2013年よりフリーランス。著書に『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)、『オトメゴコロスタディーズ』(サイゾー)『ぼくたちの離婚』(角川新書)、コミック『ぼくたちの離婚1~2』(漫画:雨群、集英社)(漫画:雨群、集英社)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)がある。【WEB】inadatoyoshi.com 【Twitter】@Yutaka_Kasuga



