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28歳で発達障害だと気づいた絵本作家の苦悩「あだ名はロボットでした」

朝6時に寝て昼12時に起きる生活

――仕事そのものには支障はなかったですか? 西出:業務だけ見ると、私はしっかりできてました。目的がハッキリしていたら迅速に動けました。就職した会社はすべてデザイン会社で、デザインは早く上げられるし、機械のように動けました。そのあたりは秀でた部分だと思います。  でも逆に会社の人間関係における忖度や、パーティのように空気を読んで判断しなければならない自由な空間に行くと立ち尽くすしかできない。どうしたらいいのかわからない。ハッキリした目的がないと何もできなくなる。そのギャップの差もすごくて、周囲の皆から「変な人、怖い人」と思われる要因でした。 西出弥加さん――そこで現在はフリーになられたんですね。少し楽になりましたか? 西出:学生の頃は、自分がフリーになると思っていませんでした。朝起きて会社に行って、夕方には友達と晩御飯を食べたりとか、そんな生活が理想で必須条件でした。それが絶対にやり遂げたいことでした。でも、実際は自分にとって「当たり前」と思ったことが、何もかも全てできなかった。昔はそれで、元々低い自己肯定感はマイナスとなり、自責の念に押しつぶされて、結果、寝たきりでした。  また、夜に眠れないので昼夜逆転してしまいます。今も朝の6時に寝て昼の12時に起きるといった生活で仕事をしています。吸血鬼のような生活(笑)。ただ、ありがたくも、食べていけるだけのお仕事を頂いているのでフリーランスのほうが自分に合っています。  日光に当たらないと鬱になるよと言われましたが、私は無理して生活リズムを整えなくなってから、鬱々とした気質が全てスッキリ抜けました。自分はこれが合っている。みんなそれぞれ、自分にとってのタイミングと正解があるんだと思います。

子供の頃のあだなは「ロボット」

――そこで診療内科に通って、自分が発達障害であるという事実にたどり着いたのですね。 西出:はい。病院はとにかくいろいろなところに行きました。東洋医学や西洋医学、サプリやアロマ、スピリチュアルに至るまで「どうしたら生きやすくなるんだろう」って思って、藁にもすがる気持ちで片っ端から試してしまいました。なんせ体調不良で寝たきりになるので、お金もなくなりますし、見た目は結構普通に見えて、誰も助けてはくれない。 ――冒頭におっしゃっていた幼少期から「おかしな子」と言われていたのは、実際はどんな感じだったのでしょうか? 西出:たとえば大人にプレゼントをもらって全力で喜ぶといった子供らしい言動ができなかったですね。でも嬉しい気持ちもあった。表情にどうしても出せなかった。先生や周りの生徒から呼ばれていたあだ名は「無表情さん」とか「ロボット」。でも無表情で冷静に見えていた一方で私自身、「全部自分の思い通りにしたい」といったワガママな一面もあったため、友達とはすぐ喧嘩になってしまう。「人って思い通りにならないな」と思っていたので、友達はいませんでした。一人で地面にチョークを使って絵を描いていたので、地面が友達でした。  地面は雨が降っても、皆に足の裏で踏まれても、ただそこにあるだけでドッシリ構えてて何も言わないし、すごくカッコいいと思っていたんです。
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