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Vol.13-1 「思い通りにならないことに耐えられない」吃音に苦しんだ男性が離婚を選んだワケ

ぼくたちの離婚 Vol.13 離婚して、良かった #1】  待ち合わせ時間の直前、片山孝介さん(仮名/43歳)は筆者のスマホに「初対面なのにニット帽姿ですが、すみません」と丁寧なメッセージを送ってきてくれた。第一印象は、礼儀正しく、腰が低く、誠実な人。やや神経質そうではあるが、とっつきづらくはない。黒縁メガネにうっすら生え揃ったヒゲがよく似合う。横浜市内のIT企業に勤めるソフトウェア開発者だそうだ。 ぼくたちの離婚 Vol.13 #1 挨拶と軽い世間話を交わしたあと、片山さんは告白した。 「僕は小さい頃から“どもり”、つまり吃音(きつおん)に悩まされてきました。特に自分の名前を言うのが苦手で、“か、か、か、か、か、片山です”となってしまうんです」  まったく気づかなかったと伝えると、今では相当改善されたという。どれほど努力して克服したのだろう。 「僕は吃音も離婚の遠因だと考えているので、申し訳ないんですが、僕の小さい頃の話から聞いていただけますか?」  もちろんですと答えると、片山さんは話しはじめた。緊張気味なのか、鼻先にうっすら汗をにじませながら。

吃音ですべてが思い通りにならない

「出身は北関東・某県の田舎です。父はサラリーマン、母は専業主婦、妹がふたり。僕は吃音のせいで、小学校の時から学校でいじめられていました。中学では親しい先輩が僕のことを守ってくれたので大丈夫でしたが、高校は再び地獄。毎年新年度の自己紹介が本当に苦痛で。第一声の『か、か、か、か……』で、クラス中が露骨に『アレ? 何こいつ?』という視線を向けてくるんです。 ですから学校では常に引け目を感じていました。誰かと積極的にコミュニケーションを取ったり、自己主張をしたりという気持ちになれないんです。仕方なく、クラスのイケてない小グループに所属して地味な高校生活を送っていました」  学校で溜まった鬱憤は、家で晴らしていた。 「うまく話せなくて自分を出せない。そんなもどかしさから来るストレスを、親への暴言や妹への暴力で解消していました。妹にゲンコツで当たり散らしていたんです。最低でした」
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大学時代に気づいた、根深い問題
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