彼氏がキャンセルしたお店から持ってきた絶品ティラミスに感動
彼氏はすぐに持っていたタオルハンカチで拭いてくれたそうですが、びしょ濡れのまま立ち尽くして涙目の祐子さんを見て、「ディナーは別の日にしよう」と一言。通りかかったタクシーに2人で乗り込み、そのまま帰ることにしました。
しかし、予約していたレストランはキャンセルしなければなりません。直前なので代金を払う必要もあり、彼氏はタクシーの運転手にまずレスランに寄ってもらうように伝えます。
「お店の前に着くと、彼氏は『少し待っててね』と言って中に入っていきました。5分ほど経って戻ってきて、私が当時住んでいたマンションに向かったんですけど、車内で私はずっと『今日はごめんね……』と泣きながら謝り続けていました。
だってお金だって全額払わなければならないじゃないですか。それなのに私のことを心配してくれてなんだか申し訳なくなっちゃって」
自宅に戻り、すぐにシャワーを浴びたことでようやく落ち着くことができた祐子さん。そこで、あらためて彼氏に謝ったそうですが、「気にしなくていいから。それよりコレ一緒に食べよう!」と紙箱から取り出したのはティラミス。
実は、キャンセルで代金だけ払おうとレストランに寄って事情を説明した際、「だったらこれだけでも持っていってください」とお店の人が包んでくれたそうです。
「このとき食べたティラミスは、本当に美味しかった。昔から好きでよく食べていましたが、今でも一番記憶に残っています。あんな出来事があったからかもしれませんけどね」

思い出のお店のティラミス
レストランには年明け、あらためてディナーを食べに行ったそうで、お店の人も彼氏のことを覚えてくれていたとか。頼んでいたコース料理に一品オマケしてもらい、それからもたびたび利用し、2人の定番デートスポットに。
「今は残念ながら閉店しちゃってないですけどね。ただ、もしカレがびしょ濡れの私を見てもレストランに連れて行こうとしたら幻滅してしまい、夫婦にはなっていなかったかも。そう考えると、私たちにとってのターニングポイントだったのかもしれないですね」
前向きにとらえられるのはいいことですが、できれば同じ目には遭いたくないもの。ふだん気にも留めない道路の水たまりですが、側を歩く際は注意したほうがよさそうです。
―シリーズ「
秋冬のトホホ」―
<文/トシタカマサ イラスト/やましたともこ>
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。