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48歳・シングルマザーが長年、大規模イベントを主催し続けるワケ「運営費は…」

 コロナ禍での行動制限が緩和していく中で、各地でライブやリアルイベントが続々と復活していますが、それなりの規模のイベントとなれば、イベント会社など企業、団体などが運営をとりしきっていることがほとんど。  そんななか、1500人以上も集客するゲーム音楽イベントを個人で立ち上げて、10年間も運営している女性がいます。
「くまぁん」さんこと加山志穂さん

「くまぁん」さんこと加山志穂さん

 2023年で10回目を迎える「東京ゲーム音楽ショー」は、ゲーム音楽家の見本市。毎年、国内外からゲーム音楽好きが集まります。  シングルマザーとして一人娘を育て、介護タクシーの仕事をしながらイベントを継続している「くまぁん」さんこと、加山志穂さん(48歳)に、これまでの経緯やイベントにかける思いを聞きました。

17歳の時に初めて“コスプレダンパ”を立ち上げ

2019年の東京ゲーム音楽ショーの様子

2019年の東京ゲーム音楽ショーの様子

――「東京ゲーム音楽ショー」とはどんなイベントなんですか? 加山志穂(以下、加山):実際にゲーム音楽を作曲しているコンポーザー(作曲家)が出展して、物販で直接CDを買ったり、サイン会、トークショー、ステージまで楽しめるゲーム音楽家の見本市です。 ――小さい頃からゲーム音楽が好きだったんですか? 加山:物心ついたころからゲームの“ピコピコ音”を聞いて育ちました。父親がゲーム機のコレクターで、家庭用ゲーム機のない時代から喫茶店にあるようなスペースインベーダーのテーブル筐体がなぜか家にあったりして(笑)。父がスーパーファミコンとかメガドライブとか、家庭用ゲーム機が発売されるとすぐに買ってくるので、親にねだったりしなくても全種類揃ってるような環境でした。母の手前、子どもの存在をだしにして買ってくるんですが、なぜかソフトはゴルフや麻雀。ルールが分からないよって(笑)。 ――初めてイベントを主催したのは? 加山:17歳の高校生の時に初めて自分でコスプレイベントを立ち上げました。当時TM NETWORKとかをカラオケで歌ったらすごく盛り上がるのに、なんでみんなで邦楽メインの歌って踊れるようなイベントがないんだろうと思って、コスプレダンスパーティー、略して「コスプレダンパ」を開催したんです。今でいう「アニクラ(アニソンばかりが流れるクラブイベント)」の本当の初期のようなかたちで、売り上げをあげようというのではなく、200円とか300円のカンパをみんなで出し合って、公民館を借りてワイワイやりました。

「人を喜ばせたい」の一心でイベント企画をするように

――イベント会社などで働いたことはあるんですか? 加山:イベント会社での勤務はしたことはないです。高校を卒業して、二子玉川にあった「ナムコ・ワンダーエッグ」というテーマパークのアトラクター(スタッフ)になったんです。ナムコ(のちのバンダイナムコゲームス)が運営するテーマパークで、1992年に開園して、2000年末に閉園してしまいました。 ここで働いている期間に「ゲーム雑誌が人手不足だから手伝いに来ないか?」と誘われて、雑誌のライターみたいなことをやっていました。そこで「ゲームの発売記念イベントやりたいんだけど、どうやっていいか分からない」みたいなイベントの相談をたくさん受けるようになったんです。 ――そういうイベントって、イベント会社とかに依頼するものではないですか? 加山:今でこそさまざまなイベントの形がありますが、イベント会社だと内容がテンプレートに寄りがちだったんですよね。私は人が喜ぶことをとにかくやりたいというタチで、どうしたら来てくれるお客さんが喜んでくれるかだけを考えて、企画を考えていました。 今では当たり前ですが、ゲームの内容に合わせて声優さんメインのイベントやコスプレイベントを企画したり。その結果、プランナーのほうが向いてるなと思うようになりました。 ――「人を喜ばせたい」という軸で動いているうちに、向いている業種に出会ったのですね。 加山:そうですね。これまで頼まれたら断れない性格のおかげでいろんな経験をさせていただく機会が多かったのですが、唯一自分がやりたくて門を叩いたのは、佐川急便の宅配の仕事だけです。宅配の仕事はつらい労働としてとらえるのではなく、「今日はどうやってこの荷物をさばいてい行こう。どうやって攻略していこう」と、ゲーム感覚でこなしていきました。 他の仕事でも言えますが、「ツライ」と思ったら本当にツラくなるだけなので、自分で楽しくする思考の置き換えを常にしていましたね。コロナ禍になって荷物が1.5倍ぐらいに増えても「うわー、はははは、やばー」とか言いながら(笑)。他のドライバーがゲッソリしてたら「佐川魂みせんかーい!」「おー!!」と周りも巻き込むように、笑顔で意図的に声がけしてました。これも対戦のチーム戦のノリって感じで。
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介護タクシーの仕事もイベント運営も「楽しい」
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東京ゲーム音楽ショー
2014年から毎年開かれているゲーム音楽の見本市。出展者14組から毎年徐々に増えて、2019年には最多65組の出展者、1700人ほどの入場者を記録した。2023年は40を超えるゲーム音楽作曲者、レーベル、企業が出展予定。第10回開催記念アルバムも販売する。
開催日時:2023年4月15日(土)
会場:大田区産業プラザPiO 大展示ホール
料金 優先入場チケット:5,000円
前売り券:3,000円
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