岡田将生(33歳)の“嫌になるくらいダサい演技”がスゴい。もう可愛いだけのイケメン俳優じゃない
岡田将生がもう33歳だなんて。2006年のデビューからすでに17年もの月日が流れてしまったということか。
大人の俳優に違いはないのだけれど、いつまでもあの可憐な岡田君のままでいてくれよ……。みたいに勝手な願望を抱きつつ、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中の主演最新作『1秒先の彼』を観るとあら不思議!
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、33歳の“ありのまま”が描かれる本作の岡田将生を読み解く。
岡田将生のことをつい「まー君」と呼びたくなる。『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(フジテレビ系、2007年)で小栗旬や生田斗真などメインキャストのうしろでただただ可愛らしくたたずんでいた頃の岡田なら、まだそう呼べたかもしれない。でも現在の彼はどうだろう。
連続ドラマ初主演作『オトメン(乙男)』(フジテレビ系、2009年)から早くも演技に厚みが出た。同作で道着姿だった岡田が『昭和元禄落語心中』(NHK総合、2018年)では落語家の和装をエレガントに着こなす。
驚くべき怪演ぶりを見ると、「可愛いだけのイケメン俳優じゃないんだ、俺はもう」という魂の叫びが聞こえる気がする。
今や役と向き合いながら自由自在にドライブする感性を持つ演技派となったのだ。ああ、もう「まー君」なんて気安く呼んでいられない。岡田の演技が覚醒し始めるとともに、ちょっぴりさみしくも感じたのは筆者だけだろうか……。
ドライブ感のある名演で言うと、濱口竜介監督による長尺作『ドライブ・マイ・カー』(2021年)の岡田は神がかっていた。三浦透子が運転する夜の車内。主演の西島秀俊と後部座席で会話する岡田がヤバかった。
長い長い会話場面だ。濱口監督は話し手の岡田にカメラを向け続ける。観ているこちらの時間感覚が麻痺してきた頃、いきなり岡田の表情に恐るべき変化が見られた。静かなる空気感がゾクッとさせる。
一瞬だが確かに感じ取ったこの恐怖は事実、直後の場面で恐るべき行動に岡田演じる高槻耕史を駆り立てることになる。
俳優の才能を見出す監督の慧眼とも言える演出だが、見抜かれた岡田が魅せる人間離れした名演には言葉を失うばかりだった。




