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逮捕劇からの復帰で“無双状態”に突入した26歳俳優。最新公開作で昇華される深い苦しみ

 2020年に伊藤健太郎が逮捕されたときは、ああもうダメかと思った。  が、苦境を乗り越えた伊藤は、見事表舞台にカムバックした。正真正銘の俳優として、彼は再びスクリーン上で躍動する。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、“いつまでも付いていきたい俳優”だと感じる伊藤健太郎、復帰後の俳優像を探る。

2020年の不祥事

『のぼる小寺さん』DVD(Happinet)

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 芸能界に生きる者が、ときに不祥事を起こすことがある。ここ数年も衝撃的なスキャンダルは相次いでいる。中でも俳優の伊藤健太郎が引き起こした自動車事故は今なお鮮明に記憶されている。  2020年10月28日、伊藤が運転する乗用車がバイクに衝突した。彼は現場から逃走したが、事故を目撃した男性に諭され、現場に引き返す。翌29日に逮捕。不起訴処分となったものの、芸能の表舞台からは身を引かなくてはならなかった。  素晴らしい才能と感性を持った俳優だけに残念でならなかった。伊藤の姿を筆者が劇場のスクリーンで最後に見たのは、確か工藤遥主演のボルダリング映画『のぼる小寺さん』(2020年)だったと思う。

試練の歳月

 同作での伊藤は見る人に徹していた。主人公の小寺(工藤遥)を遠くから見つめる近(伊藤健太郎)の視線がただただ美しかった。ラスト近く、ふたりがベンチに横並びで座るツーショットのきらめき。背景から神々しい夕日が差す。  あの青春の輝きがあり、その直後に怒涛の逮捕劇が繰り広げられる。劇中では見る側だったのに、フレームの外の世界ではいきなり好奇の眼差しを受ける側になる。現実とは、こんなに過酷なものなのか。  出演作品が怒涛の公開ラッシュで、順調にキャリアを重ねていた伊藤が直面した試練。その歳月はどんな日々だったのだろう。彼は再び立ち上がることができるのか、できないのか。あのとき、ほんとうに多くのファンが伊藤のカムバックだけを切に願った(筆者もそのひとり)。
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