「観客にわからなくていい!」菅田将暉の熱すぎて嫌われたキャラが、最後に見せた凄み|ドラマ『もしがく』第1話
三谷幸喜、25年ぶりのフジテレビでの連続ドラマと鳴り物入りではじまった『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(水曜22時、フジテレビ系)。
舞台は1984年(昭和59年)の渋谷。路地裏のネオンきらめく歓楽街「八分坂」をオープンセットで作るという力技と、主演の菅田将暉を筆頭に、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波、アンミカ、秋元才加、野添義弘、野間口徹、シルビア・グラブ、菊地凛子、小池栄子、市原隼人、井上順、坂東彌十郎、小林薫、渡辺謙……と、これで大河ドラマができそうな豪華な顔ぶれに圧倒される。
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主人公の久部三成(菅田将暉)は蜷川幸雄に憧れる若手演出家。自分の作った劇団にもかかわらずやりたい演劇ができず苛立って、迷いこんだのが「八分坂」。無料案内所の老婆(菊地凛子)に紹介されたスナック・ペログリーズでぼったくられ、大事なシェイクスピア全集を取り返すため、ストリップ劇場・WS劇場へ。そこで倖田リカ(二階堂ふみ)のダンスに魅入られて――。
八分坂には放送作家志望の蓬莱省吾(神木隆之介)、八分坂神社の巫女・江頭樹里(浜辺美波)、ダンサーのいざなぎダンカン(小池栄子)、WS劇場の用心棒トニー安藤(市原隼人)、客引きのうる爺(井上順)、ジャズ喫茶店のマスター風呂須太郎(小林薫)等々……クセ者たちの吹き溜まりで、どうやら久部は潰れかかったストリップ劇場を立て直すことになるらしい。
老婆が久部に予言を告げる。「あんた変わるよ 八分坂で」「一国一城の主となりそして――」。それはまるでシェイクスピアの『マクベス』の魔女の予言のようだ。
一国一城の主になると予言された久部だが、目下、苛立っている。
「どうしてもっと観客を信頼しない。彼らはわかりやすさなんか求めてはいないんだ」「おもしろさに価値を見出すな」「わかりやすい芝居つくって何になるんだよ」「答え合わせなんか必要ないんだよ」「わからなくていいんです 理解しなくていい 感じてくれれば」等々、主にわかりやすいものをやりたくないということのようで、自身の演出作「クベ版 夏の夜の夢」ではシュールな蚊取り線香の舞台装置を作って劇団員たちを困惑させていた。
菅田将暉とフジテレビといえば、映画化もされ大ヒットした『ミステリと言う勿れ』(2022年)の久能整君のやさしく穏やかで理性的なキャラクターが思い浮かぶ。だが今回の菅田将暉は真逆で来た。
菅田は器用な俳優で、整くんのようなナイーブな役から、Netflixの『グラスハート』の金髪で眉毛も潰したビジュのキレッキレな天才アーティストから、今回の久部のようなやかましい人物まで、別人のように演じてみせる。





