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Vol.15-3 「あなたの大切なものは全部奪う」離婚を告げたら妻が脅迫…夫がとった作戦とは

「あなたの大切なものは全部奪う」

 離婚の話し合いは壮絶を極めた。わめき、叫び、怒鳴り散らす志津さん。彼女の恨み節を、仲本さんは再現する。 「あなただけが傷つかないのは癪(しゃく)だから、あなたも傷ついてほしい。仕事を今すぐ辞めて困窮しろ。あるいは、罰としてあなたの能力をまったく生かせない、かつ給与の低い仕事に転職して、慰謝料を500万払え。そう言われました。理由を問うと、離婚すれば私の人生はめちゃくちゃになり、私の情緒はさらに悪化してきっと会社を辞める羽目になる。あなただけのうのうと働き続けるのは不公平だから、と」 ぼくたちの離婚 Vol.15 #3 すさまじい言い分である。 「あなたが仕事で成功するのは許せない。絶対に阻止すると、睨みつけながら言われました」  しかも志津さんは、仲本さんの離婚後の人生にまで口を出してきた。 「再婚は絶対に許さない。もし再婚したら、その相手を必ず見つけ出して、あることないことあなたの悪行を送りつける。あなたには絶対にわからない方法で。あなたの大切なものは全部奪う」  完全に脅迫である。激昂した志津さんはさらに続けた。 「あなたはきっと、心の病んでない普通の奥さんと結婚する。朗らかで美人な奥さんを。どうせすぐに相手が見つかるし、すぐに再婚する。それが許せない。あなただけが幸せになるのが絶対に許せない。だから傷ついてほしい。今すぐに、今ここで!! 早く!! そうヒステリックに急き立てました。 すごく怖かったし、すごく腹が立ちました。気が遠くなって倒れそうになりました。でも、ここで倒れるわけにはいかない。生き残るんだ、生き残るんだと、自分に言い聞かせました」

「話す価値のない、呆けた抜け殻」を演じる

 正攻法で立ち向かっては埒(らち)が明かない。そう踏んだ仲本さんは最終手段に出る。詐病(さびょう)を装ったのだ。 「志津に強く詰められた時、まともに答えるのではなく、『強いストレスで混乱し、ろれつが回らず要領をえない病人』を演じることにしました。いや、半分くらいは本当にそういう状態だったので、完全な嘘ではありません。同情を誘ってもどうせ無駄だと思ったので、『話す価値のない、呆けた抜け殻』に見えるよう、頑張って芝居しました。ずるい手を使ったと思います……」  志津さんはそんな仲本さんの様子を見て「詰めても無駄」と感じたのか、当たりが徐々に弱くなった。離婚の話し合いは少しずつ進展し、その途上で志津さんは家を出ていくが、仲本さんに対する執拗な精神攻撃は続いた。
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「夫がおかしくなった」
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