「次の日、『今日ちょっと話そう』って。明らかに様子がおかしいんですよね。それで仕事のあと、ふたりで小諸そばに行ったんです。
お店に向かってるときから、『なんで約束守れないの?』って責められて……最初は悲しかったんですけど、どのタイミングかでホントに急に、『私何してるんだろう?』って思ったんですよ。この人に小諸そばの数百円程度をおごられたくないなと冷静に思いはじめたんです」

自らかき揚げ丼セットの食券を購入しようとするカスミさんを、面倒くさそうに制止する彼……。
「『俺が出すって。てかセットにして全部食べれるの?』って言ってきたんです。別にそこまで量多くないし、セットでも550円くらいですよ。なのに単品にして、さらに安く済まそうとされてるような感じがして、もう一気に冷めました」
あんなに憧れていた彼なのに、気持ちが冷めると一転、ただのケチ臭い男にしか見えなくなってしまったというカスミさん。安い食事代しか出す気がない彼に、体まで許しているのが急にバカバカしくなり、このときほぼ無言で食べたかき揚げ丼セットが、彼との最後の食事になったのだと言います。
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不倫デートの悲喜こもごも―
<文/森田 奈々 イラスト/やましたともこ>