正太さんは離婚成立後、芽衣ちゃんと住むための中古マンションを、両親の住む実家近くにローンで購入した。
「両親が芽衣を見てくれているので、なんとかかんとか育てることができています。
芽衣は週に1回、両親宅でお泊りなんですが、ナンパをするのはそういう日ですね。夜、帰ってこなくてもいいんで。飯行ったあとに、ワンチャンあるかもしれない(笑)」
呆れるというべきか、バイタリティがあると言うべきか。しかし正太さんに再婚の意思はない。
「会社関係で出会いはまったくないので、離婚後にマッチングアプリで再婚相手を探した時期もありました。2年くらいはがんばったかな。芽衣にお母さんがいないのは、かわいそうかなと思って。だけど……厳しかったですね。なんなら、
離婚する時よりも、マッチングアプリで相手探しをしている時のほうが辛かった。わりと、人間不信になって……はは(笑)」
今までの笑いとは違う、力のない笑いだった。今まではどんな暗い話も能天気に笑い飛ばしていた正太さんの顔が、すっと曇る。
「バツイチ子持ちの状況と年収を正直に書いたんですけど、
『私より年収の低い人は論外』とか普通に言ってくるし、離婚した状況を伝えると
『押しに弱いあんたが悪い』と説教されるしで。痛いとこばかり突かれて、とにかく疲労しましたね。何人かと会いましたが、傷つくだけの2年間でした」
再婚直前まで行きかけた看護師の女性もいたそうだ。
「ディズニーランドまで行ったんですけどね。ある時、はっきりと言われました
。『私、年収の低い人とは付き合えないです』って。今はもう、再婚なんてしなくていいやと思ってます。芽衣との生活にお金を使いたいし、早めにマンションのローンも返し終えたいなって」
正太さんは今まで以上にダブルワークに精を出している。
「派遣の仕事ガンガン入れてますし、ネットで株式売買もやってます。手取り20万じゃ全然足りないんで。……でも、今は人生で一番楽しいっすね。芽衣がすくすく育ってるし、たまに息抜きで釣りもナンパもできますし(笑)。いやー、ナンパ楽しいっすよ」