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Vol.19-2 「DV・モラハラ夫に仕立てられた」離婚で親権を奪われた男性の後悔

日本の親権は「連れ去り得」

 結衣さんの手際は良かった。岩間さんのもとに離婚調停を希望する旨の連絡があり、婚費(婚姻費用)の請求と子供との面会交流が設定される。  依然として自宅に戻れない岩間さんは、約4ヶ月もの間、ビジネスホテルと友人の家を往復しながら会社通いを続けた。娘さんは結衣さんのもとにいるので、当然会えない。それは、離婚した場合の親権取得が絶望的であることを意味した。 「別居中に子の面倒を見ている親が“監護者”になりますから、いわゆる『継続性の原則』によって、その親が親権を取れる確率が圧倒的に高くなります。つまり、どういうズルい手段であれ、とにかく子供を連れ去った方が親権を取れる。日本の現行法制下では連れ去り得、やったもん勝ち。結衣に、見事にハメられました」  岩間さんは弁護士とともに、もし自分が娘を引き取った場合、どのように監護できるかの計画を綿密に立案する。結衣さんと同居中、自分がどれだけ娘の面倒を見ていたかを示す資料も、大量に準備した。 「沐浴なども積極的に行っていましたし、どんなに深夜に帰っても、翌朝は娘のミルクを作っていました。保育園に行き始めてからは、送り迎えも毎日です。休日は娘にべったり。結衣のほうは、保育園が決まった途端に仕事を辞めましたから、『仕事をしている結衣の代わりに僕がやっていた』ということではありません」

親権より、実(じつ)を取った

 しかし岩間さんは弁護士から、親権取得は難しいと最初にしっかり釘を刺された。結局1年ほどで調停離婚が成立。弁護士の言葉どおり、親権は結衣さんへ。裁判には持ち込まなかった。 「僕は、長く親権を争っている方に批判されると思います。なんで諦めるんだ、裁判に持ち込んででも戦うべきではないかと」  でも、と岩間さんは肩を落とす。 「現実的に考えて、今の日本では、僕がどれだけ頑張っても親権を取れません。離婚を引き伸ばしている間は共同親権者ですが、だからと言って受けられる恩恵はない。その間に子供はどんどん成長していきます。だったら僕は実(じつ)を取ろうと思いました」
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娘のための選択
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