「きれいな自殺なんてない」死にそこねた私と、特殊清掃人が見たリアル<yuzuka×小島美羽>
越えられそうにない夜を、過ごす人がいる。
世の中に絶望して、生きることを放棄したくなっている人が、この日本には溢れるほど存在しているのだ。
2020年、日本の自殺者数は11年ぶりに上昇し、前年を上回る2万1081人になった(4.5%増)。男性は前年より23人減ったのに対して、女性は935人も増えて7026人が自ら命を絶った。
コロナの影響や、著名人の相次ぐ自殺も原因になったと見られている。2020年5月23日にプロレスラーの木村花さん、7月18日には三浦春馬さん、9月14日には女優の芦名星さんが亡くなり、同じ9月の27日には、竹内結子さんも亡くなった。これは、異常事態だ。
まだ希望を持つべき人たちが、次々に命を絶っていく。厚生労働省は、「自殺はその多くが追い込まれた末の死だ」と、言い切った。
いつもきらめく笑顔を振りまいている人が、夜に飲まれて、死んでいく。その事実を、このまま他人事として傍観していてもいいのだろうか。いや、いいはずがない。それは、数週間後のあなたかもしれないし、あなたの友人かもしれないのだ。
彼らは最後に何を考えて、どうやって死んでいったのだろう。そこに何があれば救われたのか……。私はいつもそんなことを考えていた。
普段、作家として活動している中で大切にしていることがある。それは、「死にたい夜に届ける言葉を書こう」ということだ。そんな思いから『君なら、越えられる。涙が止まらない、こんなどうしようもない夜も』という新刊を出版した。甘酸っぱい片思いの実らせ方を書ける人はきっとたくさんいるけれど、そういう、苦くてどうしようもない現実を書けるのは、同じ過去を持った人間だけだと思うから。
そう、実は私も、「越えられそうにない夜」を過ごしたうちの一人だ。自殺未遂をして、警察を呼ばれたこともある。どうにか「死にたくない今」に辿り着いた私は、「死にたい今」にいる誰かに、ぎりぎり届くような言葉を探して、毎日足掻(あが)いている。
そんなときに見つけたのが、小島美羽さんだった。遺品整理クリーンサービスに所属する、特殊清掃員で遺品整理人。彼女が取り扱っているのは、「越えられなかった夜」が存在した部屋たちだ。
孤独死。自殺、病気、殺人ーー。さまざまな理由の中、その部屋で一人、息絶えた人間がいる。そんな事実が漂う部屋の後片付けをし、整理するのが、彼女の仕事だ。
そして同時に、小島さんはクリエイターでもある。自分が出会った孤独死のあった部屋たちをもとに、ミニチュア模型を製作して展示会を行ったり『時が止まった部屋:遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし』という書籍の出版も行った経歴がある。
彼女に、話を聞きたいと思った。彼女が思う、「その夜を救えたかもしれないストッパー」が知りたかった。そうして実現したのが、この対談だ。
死を意識したことのある人、ない人。両方に読んでほしい。越えられなかった夜を過ごした主人を見送ったその部屋たちには、一体どんなメッセージが残されていたのか。
死にたい夜に届ける言葉を書こう
孤独死現場のミニチュアを作る女性との出会い
彼女に、話を聞きたいと思った。彼女が思う、「その夜を救えたかもしれないストッパー」が知りたかった。そうして実現したのが、この対談だ。
死を意識したことのある人、ない人。両方に読んでほしい。越えられなかった夜を過ごした主人を見送ったその部屋たちには、一体どんなメッセージが残されていたのか。




