「きれいな自殺なんてない」死にそこねた私と、特殊清掃人が見たリアル<yuzuka×小島美羽>
本当に「死のう」と思ったらやってみてほしいこと
yuzuka:だけどペットじゃないにしろ「守らなくてはいけない」と思う対象を作るって、大事かもしれません。あと、これはちょっと馬鹿みたいなんですけど、私、「推し」という文化ってすごいなと思っていて。
小島:「推し」ですか。
yuzuka:はい。私はつい最近まで、アイドルを好きな人たちのことを理解できないって思ってたんです。でも、今は理解できます。絶対的に尊敬できる、美しいと思える人を見つけて応援できるって、生きる気力になると思うんです。たとえ身近な人じゃないとしても、この世界に尊敬できる人がいる、美しいと思える人がいるって、素晴らしいことじゃないですか。
小島:確かにそうかもしれません。
yuzuka:だから「守らなくてはいけないものを作る」のと同じくらい、「尊敬できる人、美しいと思える人を見つける」ってのも、実は大切なのかもしれないって思います。あとはやっぱり、第三者の存在って大きいです。一本の電話をとったかとってないかで、その日自殺を実行するかどうかが決まるって絶対にあると思うんです。小さなきっかけで先延ばししてもう一日生きてみたら、また明日生きる理由が見つかるかもしれない。
小島:そうですね。やっぱり自殺をする方って、誰にも相談できずに抱え込んでいる方が多いと思うので、首にロープをかけたときに、誰かから連絡が来て「あんた大丈夫? ご飯食べてるの?」って、言われたら、やっぱりはっと正気に戻って、人によっては思いとどまるきっかけになるかもしれません。
下手をすれば、宅配でピンポンと誰かが来るのだってそうです。一人だと絶対に止められない状態でも、そこにふっと第三者が入ってくることで食い止められるというのは、あると思います。
yuzuka:私も、自分が本当に死のうって思ったときに、最後に今まで謝れなかった人に謝ろうと思って、何年も連絡さえとっていない、ひどいことをしてしまった友人にも、数年ぶりに連絡しました。
小島:どういう気持ちで連絡をとりたいって、思ったんですか?
yuzuka:分からないけど、ただ「謝らないで死ぬのは違う」と思ったんです。実際に連絡をすると、その人は泣きながら「そんなことどうだって良いんだよ。私が悲しかったのは、ずっと連絡が取れなくて関係がなくなってしまったことだよ」って。
そこで初めて、全部自分の思い込みで勘違いだったんだって気づいたんです。私は一人じゃなかった。対話をすれば、一度失った関係もちゃんと修復できる可能性がある。それは生きる気力になりました。だから、もし本当に死のうって思ったら、そういう人と話をしてみてほしいです。
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<取材・文/yuzuka>
【小島美羽】
1992年、埼玉県生まれ。2014年より遺品整理クリーンサービス(株式会社ToDo-Company)に所属し、遺品整理やごみ屋敷の清掃、孤独死の特殊清掃に従事する。孤独死の現場を再現したミニチュアを2016年から独学で制作開始し、国内外のメディアやSNSで話題となる
<悩みを抱えたときの相談先>
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※午前10時から午後10時。IP電話(アプリケーション間の無料通話を除く)からは03-6634-2556(通話料有料)へ。
・厚生労働省「まもろうよ こころ」
※電話相談、SNS相談の方法や窓口の案内
yuzuka
エッセイスト、脚本家。元精神科看護師と夜職の経験あり。著書『埋まらないよ、そんな男じゃ。』他3冊。「五反田ほいっぷ学園」「愛の炎罪」等原作脚本










