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「きれいな自殺なんてない」死にそこねた私と、特殊清掃人が見たリアル<yuzuka×小島美羽>

ミニチュアで「孤独死は他人事ではない」と伝えたい

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yuzuka。コロナ禍のためリモートで対談を行った

yuzuka:はじめて小島さんの作品を見たとき、不思議な気持ちになりました。自分が出会った「死の現場」を通して、感じたことを冷静にフィルターにかけ、世間に訴えかけている。作品を見たときに、胸にささるものがあると同時に、私に似た何かを感じて、お話してみたいと思いました。 小島美羽さん(以下、小島):ありがとうございます。 yuzuka:まずは、小島さんが普段やられているお仕事について伺えますか? 小島:私がやっている仕事は、大きく2つに分けられます。まずは、特殊清掃。孤独死と呼ばれるお家の中でひとりで亡くなってしまった方のお部屋を掃除するものです。現場は、病気による急死、自殺、殺人があった部屋で、時々、ゴミ屋敷と呼ばれる部屋にも出会います。そういうお部屋のお掃除をし、原状回復をすることで、次の人がそのまま住める状態にまで持って行くという仕事です。  もうひとつは、遺品整理ですね。お掃除をしながら、そこにいた人が遺していった大切なものといらないものを区別し、整理するお仕事です。
特殊清掃の様子

特殊清掃の仕事をおこなう小島さん

yuzuka:そのお仕事をして行くなかで、現場をミニチュアにして他の人に伝えたいと思ったきっかけはなんだったんでしょう。 小島:きっかけは、エンディング産業展での出来事でした。5、6年前、まだ特殊清掃や遺品整理が今よりももっと知られていなかったころに、ブースで私たちがどういった仕事をしているのか説明する機会があったのですが、みなさんぴんと来ない様子で……。いくら説明しても「自分には関係ない」と真面目に聞いてもらえず、他人事のような印象を受けたんです。  どうして?って思いました。あなたがこうなるかもしれないのに、あなたの身内がこうなるかもしれないのに。決して他人事ではないんだよということを伝えたい、そう思ったとき、現場をミニチュアで表現することを思いつきました。  写真だとプライバシーの観点もありますし、ご遺族の方を傷つける可能性があります。また、生々しすぎて、見た人のトラウマになってしまうかもしれない。だけど自分が出会ったそれぞれの現場を組み合わせて作った架空の部屋のミニチュアなら、その心配がない。
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小島さんが製作したミニチュア作品

yuzuka:素晴らしい試みだと思います。あのミニチュアを見たとき、ものすごい勢いで想像が掻き立てられたんです。亡くなった人たちはこの部屋で、どんなことを思っていたんだろう……って。  私も普段から「自殺」についての啓発を行っています。だけど発信していくなかで、どうしても他人事だととられてしまうことが多いんです。あなたが自殺をするかもしれないし、あなたの周りに自殺を考えている人がいるかもしれないと伝えても、なかなか当事者意識が持てないんですね。  逆に本当の当事者、つまりは自殺志願者の方になってくると、ただ「死ぬな」とメッセージを発信しても「あなたに何が分かるの?」って、思うでしょう。 小島:すごく分かります。

自殺は、責められるべきものではない

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小島さんの作品。首吊り自殺のあった部屋をもとに再現されている

yuzuka:そのなかで、小島さんの作品って見た人に衝撃を与えると思います。そしてその目線は、決して他人事じゃない。実際に携わって、感じてきた現場ですから。あれを見ると、誰でも「考えてしまう」という状況に陥る。「考えさせられた」って軽い言葉のようにも思えますが、まずは最初の一歩だと思っているので、そこのきっかけを与えられているのは素晴らしいと思いました。 小島:私、実は自殺があった現場のミニチュアは作る気がなかったんです。というのも、私の考え方として「死はいつも平等にあって、自分で死に方を選んでもいいんじゃないか」っていうものがあるんですね。それこそ赤の他人が自殺をしたい人に対して「死んじゃダメよ!」と口だけで止めることに、納得がいかないんです。あなたはその人の何を知ってるの?っていう気持ちになります。  だから最終的に作ろうと決めたとき「自殺は悪いことじゃない。ただ、亡くなってしまったあと、残された人も殺される。心が死んで行く」というメッセージもつけることにしました。 yuzuka:やっぱり考え方が似ています……! 私の書いた代表的なコラムの中に「『自殺 方法』と検索したあなたへ」というものがあるんですね。一時期は「自殺 方法」で検索すると、厚生労働省の次に表示されていたくらい、アクセスの多い記事でした。  そこに書いたのは、「死にたいと思っていいんだよ」という肯定でした。まずはその気持ちに共感したんです。やっぱり限られた人間関係の中だったり、部屋の中でずっと一人で考えていると、正しいことがわからなくなっていくと思うんです。その場所以上の、その部屋以上の世界が無限に広がっているということを忘れてしまうから。  だからまずはそこに気づいてほしい、そして突き詰めて考えた先にどうしても死にたい気持ちが勝つのなら、その気持ちは肯定するよ。というふうに書きました。 小島:共感が大切ですよね。 yuzuka:自殺って、決して責められるべきことじゃない。「死ぬっていうなんて弱虫だ」とか「死んだなんて逃げだ」なんて、間違えている。「死にたい」という気持ちは恥ずかしいことでも、間違った感情でもない。  ただ、「自殺」は、とっても悲しいこと。これは事実だと思うんです。だから、その悲しいことを避けるためにもう一度考えてほしい、というのが私の伝えたい考え方なので、小島さんと似ている気がします。
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自殺のあった部屋の多くに「モノがない」理由
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