同好会自体はそれほどエキサイティングではなかったようでしたが、何かにつけて気の合う二人が付き合うようになるまでにはそう時間はかかりませんでした。

「紀子が言うには『まわりの男子は優しくてみんな良い人ばかりだったけど、なんか物足りなかった』そうで。気がついたら僕とばかり時間を共にしていましたね」と嬉しそうに当時を振り返ります。
学業、そして充実した恋愛。あっという間に大学生活は幕を閉じ、二人とも語学を生かした外資系企業に就職も決まりいつしか結婚の二文字が現実化しつつありました。

境遇の似ている両家だけあって、結婚へ向けた準備はとんとん拍子で整います。
ところが、「結婚式が近づくにつれなんとなく紀子の様子が少し気になり始めました」と重幸さん。
「これがマリッジブルーなのかなとも思ってはみたのですが、
まさか原因がお父さんのことだったとは当時は思いもよりませんでした…」
実は、式の予定が決まってから慌ただしく同棲を始めたふたり。紀子さんは初めて父親と離れて過ごす日々に寂しさや不安をつのらせ、それが原因でいつもの笑顔が徐々に減っていたのでした。