©竹内佐千子 集英社
――個人的には、第2話「忘れられたレズビアン」の「性欲はあるけどめんどくさい」という部分を読んでハッとしました。今まで『赤ちゃん本部長』の橘部長みたいに、「性欲はあって当たり前!」という価値観を周りに押しつけていたかもしれないと怖くなりました。
竹内:わかりますわかります。「性欲みんな隠してるだけでしょ? いいじゃん話しちゃいなよ!」みたいな態度をとったこと私もあったので。反省してます。本当に性欲がない人がいると知ったのが割と最近で。
性欲も恋愛欲も全くないアセクシュアルなお友達がいて、その子が告白された時に「嬉しくないの?」って聞いたら「嬉しいけど、キスとかセックスはできない」って言うから、つい「試してみたら?」って言っちゃったんですよ。
それで、その子が帰り際に「ハグだけさせて欲しい」って言われた時に、試しに拒否しないでハグしてみたら、その場で過呼吸を起こしてしまったそうで。(余計なこと言って)すみませんでした…って。
それから、やりたくないことは無理にやんなくていいじゃんって気持ちになりました。その子とはお互い全然何の気持ちもわかりあえないんですけど、ずっと友達でいます。
――竹内さんの中で、『不惑』を描く前と後で何か変わったことはありましたか?
竹内:個人的に、この作品で自分のスペックを全部バラしたことになるので、楽になりました。いちいち友達に説明しなくてよくなったので(笑)。
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――エイチさんは、竹内さんと二人三脚で『不惑』の制作に関わってみていかがでしたか?
エイチ:もともと文芸の編集部におりまして、長く小説の編集ばかりしてきたので、物事を文章にしていく作業との違いがとても面白かったです。WEB漫画は読んでもらえる機会も多くて、連載の反響がとても励みになりました。最終回のときに、「この連載が今一番の楽しみなのに、これが終わるなんてどうしたらいいの?」って方がいらして(笑)、そう思っていただけたならよかったなーと。
竹内:それは嬉しい。あと、アラフィフだけど読んでますって人もいましたね。「アラフォーを超えたけど、全然読める」って言ってもらえた時は嬉しかったです。オタクじゃない人たちは、アイドルオタク回を読んでどう思ったのか気になりますね。
エイチ:「全然わかんない」って言ってる方が多かったです(笑)。
竹内:ですよねー(笑)。わからないなりに読んでもらえるのが嬉しいです。そこはわからなくて全然いいとこだよ、って。わかると地獄も待ってるし…。
エイチ:同じCDが12枚出てきた回(第7話「お金で幸せが買えるなら」)は、オタクじゃない方々はすごく面白がっていたんですけど、オタクの方々にはあるあるネタとして捉えられていて、人によって読み方が全く違うんだなと思いました。